研究概要 |
本研究は、哺乳動物の2つの異なる性ホルモン分泌様式へのキスペプチン類の寄与を精査するべく、神経ペプチド類の受容体選択性や視床下部-下垂体系における受容体分布との関連を明らかにすることを目的としている。平成23年度は、GPR54および性ホルモン分泌の制御に関わることが報告された関連GPCRの発現細胞株の調製と、受容体局在を検出するためのプローブ分子の設計と合成を行った。 [受容体選択的リガンドと分子プローブの創製]全長キスペプチンのSer5, Ser10, Gln15, Ser20, Arg25, Pro30, Leu35, Lys40およびTyr45~Leu52のいずれかの残基をシステインに置換し、マレイミドを介して光反応性官能基を導入することにより光反応性プローブを調製した。GPR54発現細胞株への標識実験において、Pro30, Leu35, Lys40, Tyr45, Asn46およびTrp47に標識基を導入したプローブでGPR54の認識が認められ、これらのアミノ酸残基が受容体との結合に副次的に関与していることが示唆された。同様の手順でKp-14をもとにしたプローブを作成し、Trp47に相当するアミノ酸残基に標識基を導入したプローブのGPR54への結合を確認した。 [受容体活性化の分子メカニズムとキスペプチン類の生理作用の解明への応用]各種のタグ・蛍光タンパク質を融合したGPR54受容体および関連受容体の発現細胞株について、内因性リガンドの結合活性およびアゴニスト活性を評価し、一部を除いて目的の機能を有する受容体が細胞膜上に発現していることを確認した。GPR54発現細胞株では、期待されたリガンド添加による細胞内Ca2+濃度の変化が認められ、リガンド・プローブの機能評価に利用できることを確認した。
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