研究課題
本研究は、哺乳動物の2つの異なる性ホルモン分泌様式へのキスペプチン類の寄与を精査するべく、神経ペプチド類の受容体選択性や視床下部-下垂体系における受容体分布との関連を明らかにすることを目的としている。平成24年度は、GPR54蛍光プローブの創製と応用に加え、新たにGnRHの分泌制御に関わることが示唆されたニューロキニン受容体に関する実験系の構築を行った。[受容体選択的リガンドと分子プローブの創製]平成23年度の研究により得られた知見をもとに、げっ歯類の中枢におけるキスペプチン受容体の局在を解析するための蛍光プローブをKp-54およびKp-14の配列に基づいて設計し、蛍光色素の異なる複数のプローブ分子を得た。新たに作成したGPR54受容体細胞株の利用により、得られたプローブが期待される受容体調節機能を有していることを確認した。また、in vivo実験での機能評価に利用する目的で各種哺乳動物種の全長キスペプチン類の調製法を確立した。[受容体活性化の分子メカニズムとキスペプチン類の生理作用の解明への応用]近年GnRHニューロンの機能調節に関与しているとの知見が報告されたGPR54以外のGPCRの機能評価を行うためのリガンド・プローブの創製に着手した。ニューロキニン受容体をはじめとする各種GPCRの安定発現細胞株を調製するとともに、ニューロキニンBの配列をもとに構造活性相関研究を展開し、受容体活性化と受容体認識の選択性に関わるアミノ酸残基を同定した。また、一部のGPCRに対する低分子リガンドの探索を目的として、京都大学薬学研究科で保有する化合物ライブラリーのスクリーニングを開始した。
2: おおむね順調に進展している
動物組織中でのキスペプチン受容体の局在解析を行うための蛍光プローブに加え、GnRH分泌調節に関わるGPR54以外のGPCRの機能評価を行うためのリガンド・プローブを創製し、これらのリガンドに対応する受容体発現細胞株を調製した。今後は、これらのツールを利用して動物組織での解析と細胞系での実験による解析を並行して行うことで、新たな知見が得られることが期待される。全体を通して、4年計画の2年目で予定していた実施計画通りの進捗が達成できたと考えられる。
平成24年度までの研究において得られたプローブを動物組織での研究に応用し、受容体局在の解明に展開する。また、正の性ホルモン分泌調節に寄与することが報告されたニューロキニンBおよびNK3受容体の機能を解明するための選択的リガンド・プローブの創製研究を行う。複数のリガンド・プローブや受容体発現細胞株の調製が完了したことから、これらを活用してリガンドの結合様式や選択性に関する基礎的知見の蓄積を進める。
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