研究課題
本研究は、哺乳動物の2つの異なる性ホルモン分泌様式へのキスペプチン類の寄与を精査するべく、神経ペプチド類の受容体選択性や視床下部-下垂体系における受容体分布との関連を明らかにすることを目的としている。平成25年度は、新たな光アフィニティープローブの創製を検討するとともに、GnRHの分泌調節に関与することが報告された2つのGPCRに対する新規リガンドの創製に向けた基礎的知見を得た。[受容体選択的リガンドと分子プローブの創製]平成24年度までの研究により得られたGPR54受容体蛍光プローブは、中枢における受容体局在の解析のためのツールとして利用するために改良が必要であることが判明した。このため、ラットKp-14の活性発現に必要ないくつかのアミノ酸を光反応性官能基を有するアミノ酸に変換した新たなプローブを設計し、GPR54受容体結合活性および関連受容体に対する選択性を評価した。また、これまでに報告されたニューロキニン-3受容体(NK3R)選択的リガンドの生体試料中での分解特性を解析するとともに、複数の高活性新規リガンドを創製した。[受容体活性化の分子メカニズムとキスペプチン類の生理作用の解明への応用]平成24年度までに創製したGPR54蛍光プローブが、リガンド添加時のGPR54受容体の局在変化の観察に利用できることを明らかにした。また、全長キスペプチンのin vivo評価を共同研究により実施し、化学合成により得られた全長キスペプチンが効果的に卵胞発育を促すことを実証した。さらに、動物種により異なるとされる中枢からのGnRH/LH分泌調節メカニズムについて精査する目的で、各種動物種の神経ペプチド受容体を発現する細胞株を新たに調製した。
2: おおむね順調に進展している
GPR54受容体プローブがin vitroの受容体機能評価に利用できることを明らかにするとともに、化学合成により調製した全長キスペプチンがin vivoで有効であることを共同研究を通して明らかにした。これにより、キスペプチン類の生理作用の解明につながる研究ツールの準備をほぼ終えることができた。また、構造活性相関研究等を通して新規高活性受容体リガンドを見出し、今後の構造最適化研究等により繁殖調節剤として利用可能な新たなリガンドの創製が期待できる。全体を通して、4年計画の3年目で予定していた実施計画通りの進捗が達成できたと考えられる。
平成25年度までの研究において得られた受容体リガンドやプローブを利用して、ラット等の動物脳内における受容体局在解析等を共同研究により実施する。また、これまでに得られた新規受容体リガンドのin vivo評価を進め、化学修飾や製剤化の工夫によって持続的効果が期待できる薬剤の創製を目指す。
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