研究課題/領域番号 |
23689009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伝田 香里 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (00313122)
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キーワード | 樹状細胞 / レクチン / ターゲティング / 抗腫瘍ワクチン / 糖鎖 |
研究概要 |
癌の治療において、特に転移抑制・再発予防といった点から免疫療法は注目されており、臨床的にも用いられはじめているが、その効果はまだ十分とは言えず、新たな免疫療法の開発が望まれている。免疫応答の制御において重要な役割を担う樹状細胞には、種々の亜集団が存在し、個々の亜集団により異なるタイプの免疫応答が制御される可能性が示されつつある。つまり、抗腫瘍ワクチン応答を誘導するのに適切な樹状細胞亜集団を選択し、抗原を特異的にデリバリーすることは、有効な抗腫瘍ワクチン開発につながると考えられる。そこで、本研究課題では、樹状細胞、特にマクロファージガラクトース型C型レクチン2(MGL2)を発現する皮膚及び皮膚所属リンパ節に存在する樹状細胞亜集団に抗原を特異的にデリバリーする新たな抗腫瘍ワクチンを開発することを最終的な目標としている。 本年度は、MGL2を介して真皮樹状細胞亜集団へ抗原を特異的にデリバリー可能なMUC1ワクチンの作製に取り組んだ。その結果、糖鎖を多数結合させる部位であるタンデムリピートを16回含むMUC1-Igキメラタンパク質(糖鎖修飾なし、GalNAc付加、Gal-GalNAc付加の3種類)を、CHO-ldlD強制発現細胞の培養上清から動物実験に用いるのに十分な量を精製する方法を確立した。さらに、精製した糖鎖修飾の異なる3種類のMUC1-Igタンパク質を用いて、in vitroにて骨髄細胞由来樹状細胞を用いることにより、糖鎖修飾のないMUC1-Igに比べ、GalNAc付加MUC1-IgまたはGal-GalNAc付加MUC1-Igは効率的に樹状細胞に結合すること及び取り込まれるが明らかなとなった。この結合と取り込みの効果は、MGL2依存的に生じることを明らかにした。以上より、樹状細胞に発現するMGL2をターゲット可能なMUC1ワクチンの準備が整ったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖鎖修飾の異なるMUC1-Igキメラタンパク質をCHO-1d1D細胞の培養上清から精製するための当初の予備検討の段階で、培養上清から得られるタンパク質の収量が非常に少ないこと及びエンテロキナーゼによるIgドメインの消化によりMUC1タンパク質が失われることが判明し、培養条件の再検討及び消化条件の再検討が必要となったため当初の研究計画よりやや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終的な目標は、抗原の樹状細胞へのターゲティングによる新たな抗腫瘍ワクチンを開発することである。そこで、当初の研究計画では、主にエンテロキナーゼ消化後のMUC1タンパク質を用いることを予定していたが、現段階では動物実験に使用するに足る十分な量を得ることが非常に困難であるため、今後も調製を継続しながら、主に本年度の研究で精製可能となったMUC1-Igキメラタンパク質を用いることで研究を推進することとする。
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