研究課題/領域番号 |
23689009
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
伝田 香里 聖路加国際大学, その他部局等, その他 (00313122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / レクチン / 糖鎖 / ターゲティング / 抗腫瘍ワクチン |
研究実績の概要 |
癌の治療において、特に転移抑制・再発予防といった点から免疫療法は注目されているが、その効果はまだ十分とは言えず、新たな免疫療法の開発が望まれている。免疫応答の制御において重要な樹状細胞には、種々の亜集団が存在し、個々の亜集団により異なるタイプの免疫応答が制御されるらしい。つまり、抗腫瘍ワクチン応答を誘導するのに適切な樹状細胞亜集団を選択し、抗原を特異的にデリバリーすることは、有効な抗腫瘍ワクチン開発につながる。そこで、本研究課題では、樹状細胞、特にMGL2を発現する皮膚及び皮膚所属リンパ節に存在する樹状細胞亜集団に抗原を特異的にデリバリーする新たな抗腫瘍ワクチンを開発することを最終的な目標としている。 本年度の研究では、異なる糖鎖修飾を持つMUC1-IgGよりMUC1部分のみを切り出す方法の条件検討を行った結果、マウスの免疫に使用可能な十分な量のMUC1を調製することは困難であるとの結論に達し、以後の研究では異なる糖鎖修飾を持つMUC1-IgGをワクチンとして用いることとした。異なる糖鎖修飾を持つMUC1-IgGをin vitroで骨髄細胞より誘導した樹状細胞に抗原を取り込ませると、Tn抗原あるいはT抗原で修飾されたMUC1-IgGは糖鎖修飾のないMUC1-IgGに比べて樹状細胞により結合し、取り込まれることが明らかになった。この結合および取り込みは、MGL1およびMGL2依存的であった。さらに、MUC1-IgGを取り込ませた樹状細胞をワクチンとして用いたところ、糖鎖修飾の有無にかかわらず、MUC1に対する抗体応答は認められなかったが、Tn抗原で修飾されたMUC1-IgGを取り込ませた樹状細胞で免疫されたMUC1. TgマウスにおけるMUC1発現マウスメラノーマ細胞の実験的肺転移が抑制される傾向が認められた。この効果にはCD4陽性T細胞が関与するらしい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初ワクチンとして用いることを想定していた異なる糖鎖修飾を持つMUC1を大量に調製することができず、ワクチンとして用いる抗原をMUC1-IgGへと変更したが、それ以外についてはおおむね当初の研究実施計画の目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、MGL2を発現する真皮樹状細胞に抗原をターゲットした場合に、MUC1-IgGの糖鎖修飾の違いによって異なる免疫応答が誘導されるかどうか明らかにする予定である。さらに、C57BL/6マウスあるいはMUC1. Tgマウスを用いて、異なる糖鎖修飾を持つMUC1-IgGをワクチンした場合の抗腫瘍効果を明らかにする予定である。
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