研究課題/領域番号 |
23689010
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
櫻井 文教 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (70370939)
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キーワード | 非コードRNA / RNA結合タンパク質 / HuR / 遺伝子治療 / miRNA / アデノウイルスベクター |
研究概要 |
遺伝子治療の実用化には、標的組織特異的に高効率な遺伝子発現を示す遺伝子発現ベクターの創製が、必要不可欠である。そこで本課題では、まずmRNAの安定性を向上させることにより、遺伝子発現の増強を試みた。まずmRNAの3'非翻訳領域のAU-rich配列(ARE)に結合することで、mRNAを安定化させるHuRを利用して、遺伝子発現効率の向上を試みた。AREを挿入したプラスミドならびにHuR発現プラスミドを培養細胞にCo-Transfectionしたところ、遺伝子発現の向上は見られなかった。これはHuRが核に局在するためと考察されたことから、細胞質に局在する変異型HuR発現プラスミドを作成し、AREを挿入したプラスミドとCo-Transfectionしたところ、遺伝子発現効率の向上が認められた。 一方で近年、アデノウイルス(Ad)のE4タンパク質とHuRが結合し、mRNAの安定性を制御していることが報告された。そこで、E4タンパク質を利用してmRNAの安定性を向上させることを目的に、Adベクターよりわずかながらも非特異的に発現されるE4タンパク質の発現プロファイルを検討した。その結果、E4タンパク質はAd遺伝子のなかで最も高い発現を示すことが明らかとなった。現在、AdベクターにAREを挿入した遺伝子発現カセットを搭載し、その遺伝子発現特性を解析している。 さらに近年、miRNAとHuRが協調的に作用することにより、より高い遺伝子発現抑制を示すことが報告されている。そこで、miRNA標的配列の近傍にAREを挿入した遺伝子発現カセットを作成し、遺伝子発現効率を検討した。miRNA標的配列としては、miR-122a標的配列を挿入したが、AREの挿入による遺伝子発現抑制効率の向上は観察されなかった。現在、他のmiRNA標的配列について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに申請者は、当初の計画通りHuRおよびAREを利用してmRNAの安定性を制御するとともに、それらを利用した遺伝子発現効率の向上に向けた検討を進めている。この実験に関しては、やや遅れ気味ではあるものの、問題点を明らかにすることで、その解決に取り組んでいる。さらに、交付申請書提出後の論文報告を受けて、新たに計画したその他のプロジェクトに関しても並行して進めており、全体としてはおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、まずHuRとAREを利用した遺伝子発現効率の向上に向けては、内在性のHuRの細胞質局在を亢進させるような外部刺激を探索する。具体的には、各種阻害剤や放射線、エレクトロポレーションが考えられる。また、上述のように、他のグループの論文報告を受け、アデノウイルスのE4タンパク質を利用して遺伝子発現効率を向上させる研究を新たに開始している。さらに、miRNAによる遺伝子発現制御システムとAREを組み合わせた遺伝子発現制御システムの開発に取り組んだが、miR-122aの標的配列を挿入した場合には、改善が見られなかった。そこで、今後はmiR-142-3pなど他のmiRNA標的配列の使用を視野に入れ、検討を進めていく。
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