非コードRNAを利用して非増殖型アデノウイルス(Ad)ベクターからわずかながら発現されるAd遺伝子の発現を抑制したところ、Adベクター投与後初期(投与2日後)に観察される肝障害が抑制されるとともに、細胞周期関連遺伝子の発現の上昇が抑制されることを見出した。Adベクターによる投与後初期の肝障害は、主に炎症性サイトカインによるものであることが報告されていることから、Adベクター投与後の炎症性サイトカイン発現量について検討したところ、今回開発した新規Adベクターと従来型Adベクターとの間に有意な差は見られなかった。またAdベクターによる初期の肝障害に関与することが報告されているNatural killer(NK)細胞の関与についても検討したが、NK細胞では新規Adベクターによる初期の肝障害の低減は説明できないものであった。そこで初代培養肝細胞に各種炎症性サイトカインを作用させたのち、新規Adベクターならびに従来型Adベクターを作用させたところ、従来型Adベクターでは細胞障害が観察されたのに対し、新規Adベクターでは細胞障害は減少していた。以上の結果より、Adベクターによる初期の肝障害には炎症性サイトカインによる刺激に加えて、Adタンパク質が重要な役割を果たしており、非コードRNAを利用してAdタンパク質の発現を抑制することにより初期の肝障害が抑制されることが明らかとなった。また新生仔マウスにおいても非コードRNAを利用してAdベクターからのAd遺伝子の発現を抑制することに成功した。
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