研究課題/領域番号 |
23689013
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中畑 泰和 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50390810)
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キーワード | 概日時計 |
研究概要 |
概日時計と老化/老化関連疾患の関連性が近年示唆されているが、遺伝子/分子レベルでの理解は不明のままである。本研究では、概日NAD+変動の生理的意義を細胞・臓器・個体という異なった階層で解析し、概日時計崩壊による老化関連疾患発症機構の一因が概日NAD+変動破綻によることを解明することを目標としている。 本年はNAD+変動の生理的意義を解明するため、Fluorescent Resonance Energy Transfer(FRET)法により細胞内NAD+を可視化するためのFRETプローブの開発を試みた。PRETプローブとして、中央にヒトSIRT1由来NAD+結合ポケット、N端にYFP、C端にCFPを持つ1分子FRETを採用した。作成したFRETプローブを培養細胞に導入したのち、細胞内NAD+量を減少させることが知られている薬剤で培養細胞を処理し、FRET現象の有無を蛍光分光光度計で評価した。その結果、薬剤処理によりFRET現象を起こしていることを示すプローブを複数種類見出した。 次に大腸菌より精製したFRETプローブ精製標品を用いて、試験管内でNAD+および類似代謝物に対するFRETプローブの特異性の検証を行ったが、NAD+濃度によらずFRETスペクトルに変化が見られなかった。この結果は、立体構造異常のあるFRETプローブを精製したためNAD+に反応しなかった可能性が考えられた。今後はFRETプローブの精製条件検討・精製を行い、FRETプローブのNAD+特異性を検証したのち、細胞内NAD+量を可視化するFRETプローブを完成させる。 一方、恒常的NAD+量増加トランスジェニックマウスを複数ライン樹立したので、このマウスを用いて概日NAD+変動破綻が老化関連疾患発症の一因であるかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NAD+FRETプローブ開発は以下の理由で難航している。 1) NAD+量に依存してFRETを起こすプローブの作成に時間がかかった。FRET効率の高いプローブを構築するまでに、異なる部分欠損NAD+結合ポケットを持つFRETプローブを10種類作成する必要があった。 2) 機能を保持した状態のFRETプローブ精製標品の単離に時間がかかっている。大腸菌より精製標品を単離するための条件を検討した結果、FRETプローブを高純度に得ることには成功したが、この精製標品に高濃度NAD+を添加してもFRETスペクトルに変化が見られなかった。この理由を立体構造が保持できていないためであると考え、さらに種々の精製条件を検討し、精製を試みているが現在に至るまでNAD+濃度依存的にFRETを起こす精製標品を得ることはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌からのFRETプローブ精製の方法を検討し、NAD+結合能を有するFRETプローブ精製を行い、細胞内NAD+量を可視化するFRETプローブを完成させる。まずは、NAD+ FRETプローブを培養細胞に発現させ、概日NAD+変動の時空間変化を細胞内オルガネラレベルで観察し、ライブイメージングから細胞内NAD+の概日変動の意義を明らかにする。さらにNAD+ FRETプローブを発現するトランスジェニックマウスの作成に取りかかる。 また今年度作成したTgマウスの細胞、臓器をもちいて、細胞内概日NAD+変動と老化関連疾患発症メカニズム、特に肥満との関連性を分子レベルで明らかする。具体的には、1)細胞レベルでの解析:インスリン分泌能、グルコース取り込み能や関連遺伝子発現をTgマウス由来初代細胞で検証する。2)臓器レベルでの解析:糖・脂質代謝関連遺伝子発現などを高脂肪食もしくは普通食給餌 Tgマウス由来各臓器で検証する。3)個体レベルでの解析:高脂肪食もしくは普通食給餌Tgマウスを用いて、体重増加比較およびグルコース依存性インスリン分泌、ブドウ糖負荷試験、インスリン負荷試験などを行う。
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