研究課題
若手研究(A)
本年度の研究の目的は、「加齢に伴う体温調節機能の低下は、血液量低下に起因した心臓の形態・機能、血圧受容器反射の感受性、皮膚温度感覚の感受性の低下によって引き起こされる」という仮説を検証することである。まず、若年者2名を被検者とし、研究実施計画に沿った傾斜ベッドおよび水循環スーツを用いた測定を実施した結果、皮膚温度感覚の測定時に皮膚温が変化し、それが測定値に影響することを確認した。そのため、次に、若年者12名を被検者とし、下腿温浴(42℃)による受動加温前(通常体温、約36.6℃)および後(高体温時、約37.3℃)に、椅座位(背もたれ角度11O度)、仰臥位(同180度)、および、仰臥位+持続陰圧呼吸(20cm水柱陰圧)を各15分ランダムに行う方法を実施した。その間、心拍数、動脈血圧、心拍出量、呼吸数・深度、食道温・皮膚温、胸部・前腕の皮膚血流量および局所発汗量を連続測定した。また、各ステージで全身の温熱感覚および胸部・前腕の皮膚温・冷感覚閾値、左心室形態および機能を測定した。その結果、全身の温熱感覚は通常体温時に比べて高体温時に有意に上昇し、高体温時には仰臥位に比べて椅座位で有意に高値を示した。皮膚温覚閾値は各ステージで変化しなかったが、皮膚冷覚閾値は通常体温時に比べて高体温時に有意に低下し、高体温時には仰臥位に比べて椅座位で有意に低値を示した。これらの結果は、姿勢変化による中心血液量の上昇/低下が、心肺圧受容器反射を介して全身および皮膚の温度感覚を上昇/低下させることを初めて示す結果であり、仮説が一部支持された。また、中高年者に対する同様の測定を開始した。さらに、中高年者45名を対象とした6ヶ月間の運動トレーニングを実施し、速歩トレーニングによって最高酸素摂取量が約10%増加することを確認した。これらの成果から、高齢者の熱中症や心血管系疾患の予防のための、科学的根拠に基づいた安全で効果的な運動・栄養指導方法が開発されることが期待できる。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画に沿って研究に着手したが、方法上の問題点を改善し、方法を一部変更して研究を進めた。若年者、中年者、高齢者それぞれ10名の測定を計画し、若年者14名の測定を完了し、中高年者の測定を開始した。さらに、当初の計画を一部前倒しし、中高年者45名に対するトレーニング介入を実施した。以上、研究はおおむね順調に進展している。
平成23年度の研究実施計画から、方法上の問題点を改善し、方法を一部変更して研究を進めた結果、当初の目的に沿った結果が得られた。平成24年度中には中高年者の測定を完了し、若年者の結果と比較検討する。また、これまでに得られた結果についても、データの詳細な解析を並行して進める。
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