研究課題/領域番号 |
23689014
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岡崎 和伸 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 准教授 (70447754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境 / 運動 / 生理学 / 体温調節能 / 血液量 |
研究概要 |
本年度は、1)加齢に伴う体温調節機能の低下は持久性体力レベルおよび血液量の低下に起因した心臓の形態・機能、温度感覚の感受性の低下によって引き起こされる、2)これらの変化は持久性体力レベルや血液量の低い者で顕著である、という2つの仮説を検証した。 若年者13名および中高齢者10名を対象とし、下腿温浴(42℃)による受動加温前(通常体温時、平均食道温36.7℃)および後(高体温時、平均食道温37.3℃)に、仰臥位および受動的頭部挙上(チルト)時の測定を実施した。心拍数、動脈血圧、一回拍出量・心拍出量、食道温・皮膚温、胸部・前腕の皮膚血管コンダクタンスおよび局所発汗量を連続測定し、各ステージにおいて全身の温熱感覚および胸部・前腕の皮膚温・冷覚閾値を測定した。また、多段階漸増負荷試験によって最大酸素摂取量(VO2max)を測定した。 その結果、両群において、全身の温熱感覚は通常体温時に比べて高体温時に有意に上昇し、高体温時には仰臥位に比べてチルト時で有意に高値を示した。また、皮膚冷覚閾値は通常体温時に比べて高体温時に有意に低下(鈍化)し、高体温時には仰臥位に比べてチルト時で有意に低値(鈍化)を示した。これらの応答は、若年者に比べて中高齢者で低い傾向にあった。若年者13名において、低体力者(6名、平均VO2max=40.3±3.1ml/kg/分)と高体力者(7名、平均VO2max=59.6ml/kg/分)を比較すると、前者は後者に比べて各ステージにおける一回拍出量は有意に低く、皮膚温覚閾値は有意に高値(鈍化)を示した。これらの結果は、深部温および皮膚温変化に対する温度感覚の感受性の低下が体温調節機能の低下に関与し、それは持久性体力レベルの低い者で顕著であることを示唆する。熱中症予防のための科学的根拠に基づいた安全で効果的な運動・栄養指導方法の開発に向け、その根幹となる成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に沿って研究を遂行し、当初の研究目的を概ね達成した。若年者を対象とした研究については、計画水準以上を達成し、若年者において低体力者と高体力者の比較を完了した。中高齢者を対象とした研究については、計画水準の半数を達成し、次年度中に年齢に対する横断的比較、および、体力に対する横断的比較を完了し、さらに、中高齢者を対象とした縦断的比較を開始できるまでに達している。以上、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度中に年齢に対する横断的比較、および、体力に対する横断的比較を完了し、データの詳細な解析を重点的に進める。さらに、研究実施計画に沿い、次年度中に中高齢者を対象とした運動トレーニング介入による縦断的比較研究を進める。
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