研究概要 |
ヒトiPS細胞(201B6, 201B7, 253G1, 253G4)、およびヒトES細胞(KhES1)から神経幹細胞へと分化誘導し、その特性解析を行った。その結果、201B6以外の株は高効率に神経幹細胞へと分化誘導可能であり、in vitroにおいて機能的なニューロンへと分化した。また、フローサイトメトリーを用いた解析により、神経幹細胞へと分化誘導後には、Tra-1-60, Tra-1-81陽性の未分化細胞の残存は0.1%以下であり、また、90%以上の細胞がCD56陽性の神経系前駆細胞へと分化していた。次に、分化誘導中のレトロウイルス由来外来遺伝子の発現を定量的RT-PCRにより解析したところ、未分化iPS細胞では外来遺伝子はサイレンシングされているものの、一部の株では分化誘導とともに再活性化が起こっていた。 次に誘導した神経幹細胞を免疫不全マウス(NOD/SICDマウス)の脳及び精巣へ移植し、その分化能と造腫瘍性を検討した。その結果、どの株由来の神経幹細胞も脳内で機能的な神経系細胞へと分化したが、一部の株から誘導した神経幹細胞はグリオーマ様腫瘍を形成することを見出した。 さらに、レトロウイルスはゲノムへ挿入されるベクターであることから、新たな手法である、ゲノムに挿入されないエピゾーマルベクターを用いて樹立したヒトiPS細胞(409B2, 414C2)を用いて同様の実験を行った。その結果、これらのヒトiPS細胞も高効率に神経幹細胞へと分化誘導可能であり、NOD/SCIDマウスの脳及び精巣において、神経系の3系統の細胞へと分化した。しかしながら、ゲノムへ挿入されないベクターにより作成されたヒトiPS細胞から誘導した神経幹細胞であっても、in vivoにおいてグリオーマ様腫瘍を形成することが明らかとなった。
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