研究課題
前年度までに、レトロウイルスまたはエピゾーマルベクターで作成した複数のヒトiPS細胞、およびヒトES細胞(KhES1)から誘導した神経幹細胞をNOD/SCIDマウスの脳および精巣へ移植し、一部のiPS細胞株から誘導した神経幹細胞がグリオーマ様腫瘍を形成することを見いだした。さらに、グリオーマ様腫瘍を形成したiPS細胞は、一見よくリプログラミングされているようにみえても、実際には不完全にリプログラミングされており、特にゲノム安定性に関わる遺伝子群の発現量に差がみられることを明らかにした。また、中でもDNA修復に関連する17遺伝子の発現プロファイルにより、不完全なリプログラミングを検出できることを見いだした。そこで、未分化iPS細胞、および分化誘導後の神経幹細胞において、array comparative genomic hybridization (aCGH)を用いたゲノム安定性評価を行ったところ、グリオーマ様腫瘍を形成したヒトiPS細胞株は、未分化状態ではゲノム安定性が維持されているにもかかわらず、分化誘導後に初めてゲノム不安定化がみられた。また、ゲノムコピー数異常が見られた45遺伝子のうち、15遺伝子が、Oncogeneとの関与が既に報告されているものであった。一方、iPS細胞由来神経幹細胞における遺伝子発現解析では発癌との関与が示唆されている既知遺伝子の明らかな発現変化は見られなかった。これらの結果から、不完全にリプログラミングされたヒトiPS細胞は、分化誘導に伴うゲノム不安定化を介して、グリオーマ様腫瘍の形成に寄与していると考えられた。今後、さらに多くのiPS細胞株を用いて、不完全なリプログラミングによってもたらされる分化誘導に伴うゲノム不安定化と造腫瘍性との関連について、また未分化状態における17遺伝子の発現解析による不完全なリプログラミングの検出について検討していく予定である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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