研究概要 |
アダプター分子Tks5は破骨細胞分化のプロセスで発現が増加し、破骨細胞どうしの細胞融合に必要であるという知見をH23年度までに得ていた。がんの悪性化プロセスの一つである上皮ー間葉転換(EMT)の過程でもTks5の発現上昇とポドソーム(またはインベードポディア)形成が見られ、がん細胞の浸潤形質を司っているという及川らの知見(科学技術振興調整費・H20~H24による)からアイディアを得、がん細胞がマクロファージや破骨細胞と融合するためには、Tks5に依存したポドソーム形成、浸潤能獲得が必要である可能性について検証した。通常の条件ではがん細胞は融合しないため、破骨細胞と同様に転写因子NFATc1が活性化されることや、炎症性微小環境 (Johansson, C. et al., Nat. Cell Biol, 2008) (Nygren, J. et al., Nat. Cell Biol, 2008)のような、”プラスα”の因子が必要であると考え、その条件の検討を行った。その結果、Tks5の恒常的な発現が認められ、Tks5に依存したインベードポディアを形成するメラノーマ細胞株、B16F0において、破骨細胞との融合能を認めた。そしてこのインベードポディア形成能と破骨細胞との融合能は、炎症性サイトカインであるTGF-betaやTNF-alphaの添加により増強した。またRNAi法によりTks5の発現を抑制すると、B16F0と破骨細胞との融合が抑制されることを示した。
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