研究課題/領域番号 |
23689022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 卓 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20512263)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム / 遺伝学 / ゲノムワイド関連解析 / ナルコレプシー / 睡眠障害 / カルニチン / 脂肪酸代謝 / Copy number variation |
研究概要 |
ナルコレプシー及び真性過眠症のゲノムワイドなCNV(Copy number variation)解析により、PARK2遺伝子領域の頻度の低いCNVがナルコレプシー及び真性過眠症と関連することを見出した。具体的には、426例中4例のナルコレプシー患者、171例中2例の真性過眠症患者が、PARK2遺伝子領域にCNVを持っていたが、562例の健常者ではこの領域にCNVは確認されなかった。 ナルコレプシーを対象としたゲノムワイド関連解析のデータを再活用することを目的として、HLA(Human leukocyte antigen)領域の一塩基多型(SNP)のタイピング結果を用いて、関連解析及び条件付きロジスティック回帰分析を行った。その結果、新規ナルコレプシー感受性領域をHLA-DPB1及びHLA-B遺伝子近傍に見出した。そこで、571例のナルコレプシー患者と1,418例の健常者のHLA-DPB1及びHLA-Bをタイピングを行い、HLA-DPB1*05:01がナルコレプシーと有意な関連性を示すことがわかった。さらに、664例のナルコレプシー患者と3,131例の健常者のHLA-DQB1のタイピング結果に関して再解析した結果、これまでに報告されていない新たな発見として、HLA-DQB1*03:02がナルコレプシーと有意な関連性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナルコレプシー及び真性過眠症のゲノムワイドなCNV解析により、PARK2遺伝子領域の頻度の低いCNVが関連することを示唆するデータを得た。これまでにナルコレプシー及び真性過眠症のCNVに関する報告がないことから、新たな遺伝要因を報告できたのではないかと考えている。また、特にナルコレプシーは多因子疾患であり、ありふれた遺伝的多型が疾患と関連すると考えられていた。しかし、我々の研究結果から、頻度の低い変異がナルコレプシーに関連する可能性が考えられ、今後の研究方針にも影響を与えるものとなった。 HLA解析の結果からは、これまでにナルコレプシーとの関連が良く知られているHLA-DQB1*06:02以外にも、HLA-DQB1遺伝子の他のアリルやHLA-DPB1遺伝子のアリルが、ナルコレプシーと関連性を示すことが分かった。ナルコレプシーは、HLAだけ見ても複雑な機構によって、その発病に至ることが想定される。また、この結果を得るためには、サンプルサイズを大きくすることが重要であった。全国の医療機関、研究機関との共同研究によるナルコレプシーのDNAサンプルを収集する体制を構築できたことが、この成功の大きな要因であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ナルコレプシー及び真性過眠症のゲノムワイドなCNV解析により、PARK2遺伝子領域のCNV以外にも、疾患感受性の候補となるCNVを選択している。再現性研究を行うことで、真に疾患と関連するか確認する必要がある。さらに、情動脱力発作を伴わないナルコレプシー及び特発性過眠症のDNAサンプルも収集していることから、これらの過眠症においても、PARK2遺伝子領域にCNV及び上記の候補CNVが観察されるか確認する。 ナルコレプシーは単純にHLA-DQB1*06:02と関連しているのではなく、HLAとの複雑な関連が認められたことから、情動脱力発作を伴わないナルコレプシー及び特発性過眠症に関してもHLAタイピング及びその解析を行う必要がある。現時点で、情動脱力発作を伴わないナルコレプシーもHLA-DQB1*06:02と関連していることが分かっている。しかし、ナルコレプシーのように全例がHLA-DQB1*06:02を有しているわけではない。そのため情動脱力発作を伴わないナルコレプシーは、HLA-DQB1*06:02の有無によって病態が異なることが予想され、HLA-DQB1*06:02で層別解析を行うことを考えている。 サンプルサイズがこれらの研究において重要になることから、DNAサンプルの収集は継続して行う予定である。
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