研究課題/領域番号 |
23689023
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
伊東 史子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (70502582)
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キーワード | TGF-β / 血管新生 / 遺伝子改変マウス / E2-2 / FAM96B / リンパ管 |
研究概要 |
血管新生は個体の発生や恒常性維持だけでなく、がん細胞の増殖にも必要な過程である。がんの悪性化においてTGF-βは腫瘍転移だけでなく血管新生を制御して悪性化に関与することが知られている。TGF-βシグナル分子の遺伝子改変マウスの解析から、TGF-βは血管を形成する血管内皮細胞や血管平滑筋細胞の増殖・分化を制御することが示されたが、これらの遺伝子改変マウスでは血管新生不全により胎生10日目前後に致死となりそれ以後の解析は不可能であった。そこで、血管新生におけるTGF-β・ALK5シグナルの分子メカニズムを解明するために、血管内皮細胞特異的にALK5シグナルの細胞内標的分子Smadを欠損させたマウス、Smad2F/F;Smad3-/-;Tie2-Cre(Smad2,3コンディショナルダブルKO(CDKO))マウスを作製・解析した。その結果、Smad2/3CDKO胚は胎生13.5日までに全身からの出血で死亡した。CDKOマウス胚では血管新生は誘導されているが、その血管構造において血管平滑筋細胞のリクルートが減少していた。その原因として血管内皮細胞でのN-cadherinの発現量低下を確認し、TGF-βがSmad2/3を介してN-cadherinの発現と局在を制御して血管平滑筋細胞のリクルートを調節し、血管の成熟機構に関与していることを明らかにした(in press)。CDKOマウスより血管内皮細胞を樹立し、変動している遺伝子群、microRNA群を多数同定しており、血管の成熟に関与する分子の解析を行っているほか、リンパ管新生における役割についても解析を行っている。 TGF-βファミリーに属するBMPはId1の発現を介して血管新生を促進する。これまでにE2-2がId1と結合して血管新生を抑制することを報告したが、さらにE2-2に結合する新規タンパク質FAM96Bを同定した。この分子はDAF(domain unfuction)ドメインを有しているが、この領域を介してE2-2のhelix-loop-helix領域と結合することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Id1に結合し、血管新生を抑制する分子E2-2の新規結合タンパク質FAM96Bを同定し、その機能を報告した(Cancer Sci.)。腫瘍が形成する血管・リンパ管においてTGF-βシグナルを欠損させた場合、とても興味深い現象を見出している。現在、その現象のカギを握る分子の同定を進めているが、順調に進んでいる。TGF-βシグナルが血管の成熟を促すシグナルであるという知見からも解析を進めており、おおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の移動により、小動物用超音波高解像度イメージングシステムの利用が困難になった。現在、類似の機器を所有する他大学との連携を進めようと準備を始めている。
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