研究課題/領域番号 |
23689026
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高屋 明子 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80334217)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | サルモネラ / SPI1エフェクター / GogA / カスパーゼ-8 / RNAヘリカーゼ |
研究概要 |
サルモネラの病原性発現機構において、染色体上のSalmonella pathogenicity island 1(SPI1)にコードされる3型タンパク質分泌装置から直接宿主細胞に移行されるエフェクターによる、上皮細胞侵入、炎症反応、宿主細胞死等の誘導が必須である。我々はこれまでに、サルモネラ新規SPI1エフェクターGogA、GtgA2を同定し、カスパーゼ-8活性化誘導及びNFκB活性化に関与することを明らかにしている。GogAによるカスパーゼ-8活性化経路を明らかにするため、GogA発現プラスミドをRAW264.7細胞にトランスフェクションしてみたところ、カスパーゼ-8は活性化されなかった。さらに、IPTG濃度依存的にGogA発現量が制御できるプラスミドをサルモネラ野生株及びSPI1過剰発現株に導入し、GogA量依存的にカスパーゼ-8活性化が変わるか検討したところ、GogA量とカスパーゼ-3活性化量に相関性はなかった。一方、カスパーゼ-8活性化量はSPI1量に依存した。以上の結果から、サルモネラはGogAと協同して機能するSPI1タンパク質を有しており、複数のタンパク質の効果により、カスパーゼ-8の活性化を誘導することが明らかとなった。 これまでにYeast-2-hybridにより候補タンパク質のひとつとして、RNA helicaseのDdx50が同定されいる。しかしながら、Ddx50の局在は核である。そこで、GogA過剰発現株感染細胞を分画し作成したGogA抗体を用いて局在を調べたところ、宿主細胞の細胞質に局在していた。また、RNA helicaseのひとつRIG-Iとの相互作用をGogA抗体による共免疫沈降により検討したが、相互作用は確認できなかった。このことから、GogAのターゲットがDdx50、RIG-Iでないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAヘリカーゼのひとつであるRIG-IはRNAウィルス感染においてカスパーゼ-8活性化に関与することが知られているそこで、GogAのターゲット因子の候補としてRNAヘリカーゼDdx50・RIG-Iを考えていたが、今年度の実験結果からこれらはターゲットでない可能性が強く示唆された。しかしながら、Yeast-2-hybridで他に3種の候補因子があることから、RNAiによってこれらの関与を検討してる。RNAiの結果から、有力な候補があることからこの因子について実験を進めることで、ターゲットを同定できる可能性が考えられる。 また、GogA、GtgA2はカスパーゼ-8活性化を介してNFκB活性化及び炎症性サイトカインIL1β産生誘導に関与することがin vitro感染実験では示唆されている。in vivoにおける効果を検討する際、宿主免疫との関連を検討することを考えている。この研究を進めるために共同研究を新たに始めるべく、準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
GogAターゲットの同定のためにGogA抗体を作成し、tagなしのgogAを検出することが可能となった。サルモネラのGogA過剰発現株を感染し共免疫沈降を行ったが、十分な量のGogAを免疫沈降することができず、共沈するタンパク質を得ることができなかった。そこで、下記の3種の方法により、ターゲットの同定と活性化経路の探索を試みる。 1)精製タンパク質を用いたターゲット因子との共沈 2)Y2Hで得られたタンパク質の過剰発現用プラスミドの構築とHeLa細胞内での相互作用の検討 3)候補因子のRNAiによるカスパーゼ-8活性化への影響 2.我々はエフェクターを予測するバイオインフォマティクスツールを開発しており、サルモネラ全ゲノムを対象して、エフェクターを予測することが可能である。そこでカスパーゼ-8活性化に関与する他のエフェクターにの同定を行う。 3.in vivoにおけるサルモネラ感染の免疫応答:SPI1過剰発現株であるLon欠損株をマウスに感染させると長期間体内に留まり、ワクチン効果を示すことを明らかにしている。また、in vitroにおいてLon欠損にGogA,GtgA2欠損を導入するとNFκB活性化及び炎症性サイトカインIL1β産生が低下することを見出している。NFκBおよびIL1βは宿主における免疫応答に関与することから、Lon欠損株で見られるワクチン効果はGogA、GtgA2を介する可能性が考えられる。そこで、in vivoでのサルモネラ動態及び免疫応答が検出できるツールの開発を始めた。これらのツールを用いて、サルモネラ感染における免疫応答とSPI1エフェクターとの関連について検討を進める。
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