サルモネラ感染戦略の一つに、病原因子Salmonella pathogenicity island 1 (SPI1)依存的な炎症反応惹起がある。近年細菌による炎症反応惹起は共通の病原戦略であることが示唆されていることから、この分子機構解明はサルモネラ病原性発現理解だけでなく、細菌感染症理解の一助になると考えられる。これまでに我々は、SPI1エフェクターGogAがカスパーゼ-8を活性化することにより、炎症反応惹起に関与することを見出した。この分子機構を明らかにするため、GogAのターゲット候補であるU6 snRNA-associated Sm-like proteinである LSm8の関与について検討した。まずsiRNAにより検討したところ、LSm8がカスパーゼ-8活性化に関与することが示唆された。そこで、GogA-GFP及びRFP-LSm8を発現するプラスミドを構築しFRET法により相互作用を検討したところ、GogAとLSm8が相互作用することが示唆された。一方で、GogAとLSm8の過剰発現ではカスパーゼ-8活性化はみられなかった。このことから、サルモネラによるカスパーゼ-8活性化にはGogA以外のSPI1エフェクターの関与が示唆された。我々が開発したバイオインファマティクスツールを用いて新たなSPI1エフェクターを探索し、新たにSTM1239を同定したが、カスパーゼ-8活性化への関与は認められなかった。 又、in vivoにおいてターゲットとなる細胞を同定するため、SPI1過剰発現であるLon欠損株をマウスに腹腔内感染したところ、感染4日目において骨髄における細胞の顕著な減少が認められたにも関わらず、脾臓においては非感染マウスと同等であった。このことは、SPI1がターゲットとする細胞は骨髄に存在することが強く示唆している。以上の結果より、サルモネラはSPI1依存的に骨髄の細胞と相互作用することにより、感染を拡大している可能性が考えられる。
|