研究課題/領域番号 |
23689027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
KIM Minsoo 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (50466835)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 病原細菌 / エフェクタ- / 阻害剤 |
研究概要 |
腸管病原細菌による腸管感染疾患は、開発途上国を中心に毎年200万の人命を奪い、依然として大きな脅威となっている。しかし、近年、多剤耐性菌による感染症例が増加し、新たな治療薬の開発が望まれている。本研究では、赤痢菌の抗生物質に代替となる新しい治療薬の探索・開発を目的とする。赤痢菌の病原因子である蛋白質とそのターゲット宿主蛋白質との結合様式を明らかにし、複合体の機能を阻害する化合物の同定を行う。さらに赤痢菌感染に対する候補化合物の効果を検証し、より優れた抗菌剤の設計を目指す。 本年度は(1)赤痢菌の病原因子(OspE)と宿主ターゲット蛋白質(ILK)との複合体が取る立体構造の決定するための複合体の精製を試みたが、蛋白精製が容易ではなかった。構造解析ができるほどの蛋白質を得ることができなかったため、ILKと結合するOspEのペプチドを検索・同定した。(2)同定したOspEのペプチドとILKの結合を阻害する化合物を探索するためのハイスルーピットスクリーニング系の確立を目指した。OspEのペプチドとILKと分子間の相互作用を蛍光偏光法で測定するアッセイ系、さらに細胞の運動阻害能を測定するアッセイ法を確立した。(3)赤痢菌治療薬の分子標的を探すために新たな病原因子の機能解析を行った。脱アミド化酵素OspIとUbc13の複合体構造を解き,両者の結合・脱アミドか反応に重要なアミノ酸残基を同定した。 (4)OspEのホモログ蛋白質の解析を行い、他の病原細菌のOspEも感染成立に重要な役割をすることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
OspEとILKは両方とも蛋白精製がとっても困難であったため、複合体の構造解析や高効率アッセイ検出法の確立が容易ではなかった。蛋白からペプチドにターゲットを変えることで、研究計画がすこし進展したが、 当初の計画よりはやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
赤痢菌がIII型分泌装置より分泌する機能未知エフェクターとその宿主標的因を同定し、それらの粘膜感染と自然免疫回避における役割を、分子、細胞、組織、固体の各レベルで解明する。また、OspEペプチドとILKの複合体を精製し、X 線結晶解析を行い、複合体の立体構造を決定する。さらにエフェクターと宿主蛋白質の結合を阻害する低分子化合物の探索は、スクリーニング系を確立し、東京大学創薬オープンイノベイションセンターの化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、阻害剤候補を得る。OspEホモログ蛋白質の機能解析をし、赤痢菌に特異的及び他の病原細菌にも普遍的な感染戦略各々を提示する。
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