研究課題
腸管病原細菌による腸管感染疾患は、開発途上国を中心に毎年200万の人命を奪い、依然として大きな脅威となっている。しかし、近年、多剤耐性菌による感染症例が増加し、新たな治療薬の開発が望まれている。本研究では、赤痢菌の抗生物質に代替となる新しい治療薬の探索・開発を目的とする。赤痢菌の病原因子である蛋白質の機能解析を行い、治療薬の分子標的を探索する。さらに分子標的の機能を阻害する化合物を同定し、新しい抗生剤・抗菌剤を開発する。本年度は(1)赤痢菌の病原因子(OspE)の立体構造を決定するために蛋白精製条件を検討し、NMRを用いて構造解析を試みた。(2)赤痢菌治療薬の分子標的を探すために新たな病原因子の機能解析を行った。OspJ, OspHの欠損株をマウス肺に感染させ、感染応答を調べた結果、野生株赤痢菌感染組織に比べ、OspJ欠損株とOspH欠損株の感染肺組織では多くの免疫細胞の浸潤炎症性サイトカインやケモカインの上昇が認められた。この結果からOspJと OspHは赤痢菌感染において、炎症反応を抑制していると考えられる。(3)citrobacter rodentium のOspE ホモログ蛋白質である OspE (CR)の解析を行った。野生株及びOspE(CR)の欠損株をマウスの腸管に感染させ、感染応答を調べた。その結果、野生株感染組織では、感染多くの免疫細胞の浸潤炎症性サイトカインやケモカインの上昇が認められたが、OspE(CR)欠損株の感染組織ではこのような炎症応答は認められなかった。さらに OspE(CR) 欠損株の感染組織では定着菌数も顕著な減少が認められた。これらの結果から他の病原細菌のOspEも感染成立に重要な役割をすることを明らかにした。(4)赤痢菌のエフェクターOspIとUbc13の複合体構造を解き,両者の結合に重要なアミノ酸残基を同定した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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