研究課題
① 自然免疫担当細胞におけるエフェクター分子の宿主因子修飾機構の細胞レベルでの検討した。トキソプラズマ原虫は自然免疫担当細胞に主として感染する。従ってマクロファージ細胞株にROP17及び他のエフェクター分子群を発現させ、炎症性サイトカインの産生を定量的RT-PCR法及びELISA法で検討した。また骨髄由来マクロファージ及び樹状細胞にROPKsを過剰発現させ細胞運動やマウスに移入した際の抗原特異的獲得免疫応答の誘導の変化について検討した。その結果、ROP17を含むいくつかのエフェクター分子群で宿主の転写因子を活性化するものを発見した。② エフェクター分子欠損トキソプラズマ原虫感染実験による宿主因子の宿主免疫応答検討した。ROPKsを有する野生型のトキソプラズマ原虫は宿主因子を修飾することにより病原性を発現していると考えられる。従って、ROPKsやエフェクター分子群を欠損する原虫を用いて、宿主因子の有無によるマウスの病原性について検討した。遺伝子欠損原虫の作製に使用する親株は蛍光蛋白質・ルシフェラーゼ及び卵白アルブミン蛋白質(OVA)を発現しており、感染マウスの病原性については生存率のみでなく生体ルシフェラーゼ光検出システム(IVIS)による時空間的な原虫の拡散及び抗OVA特異的CD4/CD8T細胞(OT-I/OT-IIマウス由来T細胞)の移入実験による抗原提示細胞の機能解析、さらに抗原虫・抗OVA特異的抗体価の上昇の有無について検討した。その結果、①で同定したいくつかの病原性候補因子を欠損するトキソプラズマ原虫について、マウス体内での感染拡大が野生型原虫に比べて有意に遅く、さらに細胞レベルでもインターフェロンγ存在下における原虫数の増加が低下していることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに、トキソプラズマ原虫が放出するエフェクター分子の中から、マウスにおいて病原性に寄与する病原性候補因子が複数同定され、さらに宿主の免疫系に関与すると考えられる転写因子の活性化を制御することが明らかとなったため。
① 宿主因子遺伝子改変マウスの作製と自然免疫学的解析研究実績の概要①において分離された病原性候補因子の宿主因子の同定を試みる。さらにそれらについて定法により相同組換え法を用いてジーンターゲティングしたES細胞を分離し、遺伝子組換えマウスを作製する。作製した宿主因子欠損マウスについてはマクロファージや樹状細胞を用いてTLRや細胞内核酸刺激による炎症性サイトカインの産生やI型IFNの誘導、インフラマソームの活性化や共刺激分子の発現上昇、ヘルパーT細胞分化誘導能などを検討する。② in silico 解析によるROPKsのキナーゼ領域の分析と阻害剤候補の同定及びその実効性の検証する。ROPKsの構造をC末端部位キナーゼ領域とN末端部位の非相同性領域に分割しバイオインフォーマティクス解析を行い、C末端領域については既に結晶構造が決定されているどのキナーゼ分子と相同性が高いか探索し、既存のキナーゼ阻害剤によりキナーゼ活性が阻害されるか否かについてin vitro キナーゼアッセイにより検討する。また同定された宿主因子が酵素活性を持ちかつ構造的にin silico 解析可能である場合には、その活性を阻害しうる化合物を探索する。使用可能な候補阻害剤ついては、野生型原虫感染マウスに投与し病原性が低下するかどうかを検討する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Int Rev Immunol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Immunity
巻: 37 ページ: 302-313