研究課題
自然免疫による病原体DNA認識機構を理解するため、本年度は主にDNA認識センサーの単離を試みた。まず、DNA認識センサーを介するシグナル伝達経路に位置するTRIM56、STING、TBK1をベイトとし酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行った。また、これら分子を含む複合体を精製するための、二段階免疫沈降法を用いたTandem affinity purification(TAP)法によるスクリーニングを開始した。さらに、DNA認識センサーを介するシグナル伝達経路を活性化すると考えられる抗がん剤DMXAAに結合する蛋白質を単離することを目的として~ナノ磁性粒子に固定化したDMXAAを用いて結合蛋白質の分離を培養細胞株より行った。質量分析によりDMXAA結合蛋白質の解析を行った結果、ストレス顆粒と呼ばれる細胞内構造体の構成蛋白質の一つを得ることができた。ストレス顆粒はウイルス感染やストレスに応じて一過性に形成される顆粒であり、mRNAやRNA結合蛋白質が局在している。主に、ストレス時の翻訳停止等を司ると考えられている。また、ストレス顆粒に存在することが報告されている種々の蛋白質について自然免疫系に対する応答を調べた結果、インターフェロンβやIL-12p40のプロモーターを活性化することのできる蛋白質を新たに見つけることができた。自然免疫制御におけるストレス顆粒の役割ははっきりしておらず、今回同定した二つの蛋白質を中心として、主にDNAやDMXAA応答に対する役害を調べている。
2: おおむね順調に進展している
酵母ツーハイブリッド法、二段階免疫沈降法、DMXAA結合蛋白質精製など当初の計画通りDNAセンサー同定を目指したスクリーニングを重ねている。その過程で得られた2つの新たな蛋白質について自然免疫系における役割の解析も開始した。
今後も当初の計画通り研究を推進していく。これまで行ってきたスクリーニングで得られた候補分子に関してノックアウトマウスの作製も開始し、生体内での役割の解析も行う。また、ストレス顆粒に存在する分子群がDMXAAに対する自然免疫応答に関わる可能性や、インターフェロンや炎症性サイトカイン産生に関わる可能性を見出したことから、ストレス顆粒に局在する個々の蛋白質の自然免疫系における役割の解析も視野に入れて解析を行う。
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