病原体や自己のDNAに対する自然免疫応答の分子機構の解析を行った。その結果、DNA修復に関わるMre11とRad50の複合体が関与することを見いだした。Mre11は合成二重鎖DNA(ISD; Immunostimulatory DNA)刺激に伴い一部が核内から細胞質へと移行し、細胞質内においてDNAと共局在した。さらに、Mre11にはDNAとの結合活性が認められた。興味深いことに、これら分子に変異があるヒト細胞株においては、ISD刺激後の転写因子IRF3の活性化やI型インターフェロン産生が減弱していた。これらのことから、Mre11がISD認識に関わる自然免疫センサーであることが示唆された。一方、Mre11欠損は、DNA型ウイルスHSV-1感染やリステリア菌感染によるインターフェロン産生には影響がなかった。したがって、Mre11はウイルスや細菌に対するセンサーというよりはむしろ、ISDや何らかの自己由来DNAに対する認識とその後の自然免疫応答に重要な役割を果たしていると考えられた。また、Mre11の阻害剤であるMirinはISDに対するインターフェロン産生を抑制することも見いだした。したがって、MirinはDNAに対するI型インターフェロンが起因となると考えられる全身性エリテマトーデスのような自己免疫疾患治療への応用も期待できる。
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