研究課題/領域番号 |
23689032
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | オートファジー / 臨床検査 |
研究概要 |
オートファジーは細胞内の分解機構であり、医学的には細胞内に蓄積した不要物質を捕まえて、分解することにより細胞の恒常性をいじする「細胞内の掃除システム」である。オートファジーの活性は、加齢に伴い低下し、また肥満、高血糖などでも低下することが明らかになってきた。このようにオートファジーの活性が低下すると、細胞内に不要物が蓄積し、細胞機能が低下することで、老化の促進や疾患の増悪因子になりうる。さらに近年、オートファジーによるミトコンドリア分解(マイトファジー)と神経変性疾患などとの関わりが明らかになり、非常に注目されている。このため、医療の場において、患者個人が持つオートファジー活性やマイトファジー活性を知ることは、患者の治療方針の決定や予後の予測に有用であると考えられるが、これまでにオートファジー活性、マイトファジー活性を測定する臨床検査法は開発されていない。 本研究課題では、オートファジー活性を測定する検査法を開発する予備研究として培養細胞レベルでのオートファジー活性測定法の開発を行うことを目的としてスタートした。 HeLa細胞、A549細胞、SH-SY5Y細胞など種々の培養細胞にpH依存的に励起波長が変化する蛍光タンパク質Keimaを発現させた細胞作成し、昨年度は、オートファジーをある程度定量出来るようになったが、今年度はさらに、オートファジーによるミトコンドリア分解を観察できるミトコンドリア移行Keima(mt-keima)を発現させた細胞の作成にも成功している。初代培養細胞にウイスルベクターを使ってKeima遺伝子を導入する計画であったが、研究施設を移動によりウイルスが利用できないため、電気穿孔法での導入を試みている。一方で、mt-keima発現細胞を利用して研究を進めた所、副次的にマイトファジーを制御する分子機構が明らかになってきている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間中に研究代表者が九州大学から新潟大学に移動した。研究機器、資料の移動と、研究代表者自身、ポスドク、学生の大掛かりな引越しが必要で、研究活動の一時中断を余儀なくされた。また、一部の研究協力者は新潟大学に移動できなかったため、研究計画から離脱した。さらに、新潟大学における遺伝子組み換え実験など法令等を尊守するための設備と申請にも時間がかかり、当初の予定を遅らせたり、変更する必要が生じている。こうした事情があり、予定通りに進んでいない部分がある。一方で、研究実績の概要に示すように、新たにマイトファジーの活性測定法の開発にも取り組んでおり、予想以上の成果が上がっている。また、論文等としての成果報告も順調に行えており、全体としてはおおむね順調であると判断される。 今後、設備等の問題で若干の計画変更を行う必要があるが、代替法を用いたり、複数の実験系を利用することで、順調に研究が推進できるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、レンチウイルスを利用できる設備を導入し、所属機関の承認を受けた後、当初の予定にもどり、ウイルスをつかった初代培養細胞でのKeima遺伝子発現実験を実施する予定である。また、ウイルスを用いた実験が順調に進めない場合に備えて、現在試みている電気穿孔法を改良し、定量的にオートファジーが観察できるレベルになるように進めていく。 近年、オートファジーによるミトコンドリア分解と神経変性疾患などとの関わりが明らかになり、マイトファジーの理解は、今後の診断学の発展にも重要であると考えられる。オートファジーによるミトコンドリア分解を特異的に観察する方法として今年度はmt-keima発現細胞の作成に成功しているが、この細胞を用いた実験でマイトファジーを制御するシグナル経路が解明できつつ有るので、本研究もわせて推進する予定である。
|