日本人における尿中殺虫剤代謝物レベル基本特性の包括的理解

2011 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 23689034
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 上山 純 名古屋大学, 医学部・保健学科, 准教授 (00397465)
• キーワード: 殺虫剤 / 高感度分析 / 小児 / 曝露量

研究概要

平成22年度は尿中殺虫剤代謝物の分析法開発および尿サンプリングを行った。また、既存尿サンプルについて尿中有機リン系殺虫剤代謝物であるジアルキルリン酸類ΦAP》のモニタリングを行った。
【分析法開発】
ネオニコチノイド系殺虫剤の尿中代謝物である6クロロニコチン酸および2-クロロ-1,3-チアゾール-5-カルボン酸をガスクロマトグラフ質量分析計にて検出限界値0.1μg/Lまで分析することに成功した。
2-クロロ-1,3-チアゾールー5-カルボン酸測定法はこれまで報告がないことから本研究の特徴の一つとなる。現在はネオニコチノイド系殺虫剤を化学的に最終代謝物に揃えた後にモニタリングする方法を開発中である。
【尿サンプル収集】
現在、名古屋市内幼稚園および愛知県内保健所の協力を得ており、3歳児の尿サンプルを夏季および冬季に尿を採取できるよう調整中である。新生児16名から使用済オムツ約200個を回収した。クリサンテマムジカルボン酸および3フェノキシ安息香酸をオムツから測定し、現在データ解析中である。
【既存サンプルを用いた成果】
一般健常人164名、リンゴ農家147名および殺虫剤撤布作業者28名から夏季および冬季に採尿を行い、尿中DAP量をモニタリングした。その結果、尿中DAP量は若干の違いはあるものの、それぞれの集団で季節変動が存在することを明らかにした(夏季>冬季)。また、一般健常人の尿中DAP量は、アメリカやドイツから報告されているその値に比べて同等か低い値を示した。これにより、日常的に曝露している有機リン系殺虫剤量はアメリカやドイツと同等かそれ以下である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで困難とされていたネオニコチノイド系殺虫剤代謝物分析法開発が進展しており、これに伴い実サンプルへの応用も進むものと思われる。尿サンプル採取についても順調に協力施設および対象者の選定が出来ているため。

今後の研究の推進方策

他に必要となる殺虫剤代謝物測定法は既に論文等で報告されているものを採用予定であり、迅速な測定法の立ち上げは迅速にできるものを思われる。尿サンプル採取は今年7-9度月および1-3月に採取予定である。採取終了次第、既存分析法にて尿中殺虫剤代謝物を分析する。既存サンプルには新規に確立した分析法を応用し、一般健常人の基礎的データを構築する。

研究成果

• [雑誌論文] Effect of DDVP on urinary excretion levels of pyrethroid metabolite 3-phenoxybenzoic acid in rats (2011)
  • 著者名/発表者名: HIROSAWA Naoko, UEYAMA Jun, KONDO Takaaki, KAMIJIMA Michihiro, TAKAGI Kenji, Fujinaka Sanae, Hirate Ayaka, HASEGAWA Takaaki, WAKUSAWA Shinya
  • 雑誌名: Toxicology Letters 巻: 203 ページ: 28
  • 査読あり
• [雑誌論文] Panipenem does not alter the pharmacokinetics of the active metabolite of irinotecan SN-38 and inactive metabolite SN-38 glucuronide (SN-38G) in rats (2011)
  • 著者名/発表者名: KATO Ayako, UEYAMA Jun, ABE Fumie, HOTTA Kazuo, TSUKIYAMA Ikuo, OSHIMA Taeyuki, KONDO F, SAITO Hiroko, HASEGAWA Takaaki
  • 雑誌名: Anticancer Research 巻: 31 ページ: 2915
  • 査読あり
• [雑誌論文] Study Profile on Baseline Survey of Daiko Study in the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study (J-MICC Study) (2011)
  • 著者名/発表者名: MORITA Emi, HAMAJIMA Nobuyuki, HISHIDA Asahi, AOYAMA Kyoko, OKADA Rieko, KAWAI Sayo, TOMITA Koutaro, KURIKI Sayaka, TAMUBA Takashi, NAITO Mariko, KONDO Takaaki, UEYAMA Jun, KIMATA Akiko, YAMAMOTO Kanami, HORI Yoko, HOSHINO Junko, HAMAMOTO Ritsuko, TSUKAMOTO Sanae, ONISHI Johji, HAGIKURA Shoichi, NAITO Hisao, HIBI Satoshi, ITO Yoshinori, WAKAI Kenji
  • 雑誌名: Nagoya Journal of Medical Science 巻: 73 ページ: 187
  • 査読あり
• [雑誌論文] Association of UGT1A1 Gly71Arg with urine urobilinogen (2011)
  • 著者名/発表者名: KATAOKA Ryuji, KIMATA Akiko, YAMAMOTO Kanami, HIROSAWA Naoko, UEYAMA Jun, KONDO Takaaki, OKADA Rieko, KAWAI Sayo, HISHIDA Asahi, NAITO Mariko, MORITA Emi, WAKITA Kenji, HAMAJIMA Nobuyuki
  • 雑誌名: Nagoya Journal of Medical Science 巻: 73 ページ: 33
  • 査読あり
• [学会発表] パラオキソナーゼ1遺伝子多型と腎機能評価指標との関連-予備的解析- (2012)
  • 著者名/発表者名: 上山純、本郷あやの、近藤高明、森田えみ、川合紗世、岡田理恵子、伊藤宜則、内藤真理子、若井健志、浜島信之
  • 学会等名: 第82回日本衛生学会学術総会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2012-03-25
• [学会発表] 殺虫剤撒布職域従事者における尿中クレアチニン分析値の検討 (2012)
  • 著者名/発表者名: 大坂彩、上山純、近藤高明、五藤雅博、柴田英治、涌澤伸哉、齋藤勲、上島通浩
  • 学会等名: 第82回日本衛生学会学術総会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2012-03-25
• [学会発表] Concentration of urinary organophosphorus insecticide metabolites in Japanese workers (2011)
  • 著者名/発表者名: UEYAMA Jun, Saito Isao, KONDO Takaaki, TAKI Tomoko, KIMATA Akiko, SAITO Shun, MURATA Katsuyuki, IWATA Toyoto, GOTO Masahiro, SHIBATA Eiji, WAKUSAWA Shinya, KAMIJIMA Michihiro
  • 学会等名: 21 th Annual meeting of the international society of exposure science
  • 発表場所: アメリカ ボルチモア
  • 年月日: 2011-10-24
• [学会発表] 使い捨て紙オムツを利用した尿中殺虫剤代謝物測定法の検討 (2011)
  • 著者名/発表者名: 齋藤峻、上山純、齋藤勲、近藤高明、涌澤伸哉、五藤雅博、柴田英治、近並由佳、仲井邦彦、上島通浩
  • 学会等名: 第39回産業中毒・生物学的モニタリング研究会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2011-10-15