研究概要 |
平成24年度にはC1qによるWntシグナル活性化機構およびC1q誘導性Wntシグナル活性化が骨格筋の再生能低下という老化の表現型に重要な役割を果たしていることをCell誌に報告した。また、骨格筋再生能低下以外にも加齢に伴って発症率が上昇する疾患(老化関連疾患)においてC1qおよびWntシグナル活性化が果たす役割の解析を進めた。 大動脈縮窄術圧負荷を加えることで心不全を誘導するマウスでは心臓におけるC1q, C1r, C1sの各遺伝子およびWisp1, Wisp2. Nkd1, Nkd2といったWntシグナルの標的遺伝子が著明に増加していた。C1qノックアウトマウスにも同様の手術を行ったところ、心肥大から心不全への進行が抑制されており、線維化を促進する各種遺伝子の発現上昇が抑制されていたことから、C1qが心不全発症・進行の段階で起こる線維化を促進している可能性が示された。 C1qノックアウトマウスおよびC3ノックアウトマウスを中枢系メラノコルチンシステム系の変異により肥満と耐糖能低下の表現型を示すAyマウス(C57BL/6バックグラウンド)と交配した結果得られるマウスと交配し、耐糖能異常の表現型を確認したところC1qノックアウトマウスのみで耐糖能異常の出現が遅延しており、C1qノックアウトマウスで認められた表現型が古典的補体経路ではなく、C1q誘導性Wntシグナル活性化阻害によるものであることが予想された。ところが、さらに長期間高ショ糖食負荷を加えたところ、全ての遺伝型マウスで血糖値は正常化した。C57BL/6マウスでは高血糖持続状態に対する膵島の代償反応が強く起こるためと考えている。 C1qコンディショナルノックアウトマウスとタモキシフェン誘導性に全身でCre/LoxP反応を引き起すことが可能なRosa-CreERTマウスを作成した。
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