重症心不全の予後は極めて悪く、喪失した心筋細胞を補う心臓再生療法の実現化は急務である。人工多能性幹(iPS)細胞は、患者由来心筋細胞のソースとして期待される一方、低分化効率や移植後腫瘍形成など重要な課題も残されている。課題克服に向けて、申請者は、iPS細胞形成(=初期化)に関わる分子機構の解析をすすめ、最近、iPS細胞誘導過程で生じる多様な非初期化細胞集団の中から、移植後腫瘍形成が低く多数の心筋細胞が誘導される新規の集団を同定した。本研究では、この細胞集団の特性解析を通じて誘導条件を改良し、未分化iPS細胞を樹立せずに十分量の安全な心筋細胞を効率的かつ俊敏に作成することを目標にする。さらに、その効果と安全性の確認のため、光イメージング技術を利用して心臓内移植細胞の挙動を生体で時空間的に追跡し、次世代心臓再生療法の基盤構築を目指す。そこで、下記の3つのテーマに従って研究を施行した。 テーマ1 体細胞初期化過程で出現する心筋細胞誘導候補となる細胞群の特性解析 テーマ2 候補細胞群からiPS細胞樹立を介さない安全かつ効率的な心筋細胞の大量作成 テーマ3 誘導した心筋細胞の移植効果および光イメージングによる生体細胞追跡 前年度の研究成果に基づき、より効率的に心筋細胞を大量誘導できる培養系を構築することができた。また、遺伝子発現解析や免疫不全マウスへの移植実験などにより、腫瘍発症リスクが軽減していること確認することに成功した。
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