研究概要 |
心不全の発症、進行に慢性炎症が重要な役割を果たしていることが注目されているが、その発生機序については全く不明であった。私はこれまでに、不全心において変性ミトコンドリアの蓄積、その分解亢進を見出してきており、ミトコンドリアの構成分子であるDNAと電子伝達系分子が、構造上バクテリアと共通の特徴を有していることから、ミトコンドリアの分解産物が自然免疫系を活性化する可能性があると考えられる。従って、心筋の慢性炎症の原因として変性ミトコンドリアの分解異常が中心的な役割を果たしていると考えうる。本研究では、変性ミトコンドリアの分解による分解産物が心筋での慢性炎症の原因であることを実証し、その分解分子機序の解明と慢性炎症の制御による心不全治療への応用を目指して検討を開始した。 本年度は以下の検討をおこなった。 1.心筋慢性炎症におけるミトコンドリアDNAの役割の解明 ・心不全におけるミトコンドリアDNA、DNase II活性、TLR9経路活性と炎症反応を検討し心不全においてこれらの因子に大きな変化が認められることを見出した。 ・マウス心不全モデルを用いて、心不全発症機序にミトコンドリアDNA,TLR9経路を介した炎症反応が重要な役割を果たしていることを見出した。 2.ミトコンドリア分解機構の心筋炎症における役割の解明 ミトコンドリア分解に関わる細胞内分解機構であるオートファジーが心筋の炎症にどのように関与しているかを解明するため、心筋特異的atg5欠損マウスに圧負荷を作製し、心筋での炎症所見を検討した。結果、atg5欠損マウスでは容易に炎症が生じることが明らかとなった。
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