研究概要 |
EML4およびALK遺伝子の融合点を標的としたRT-PCR法は理論上偽陽性が存在せず、しかもPCR法で検出できるので極めて高感度な融合型ALK陽性肺がんの分子診断法となる。ただしALK側の融合点が常にエクソン20であるのに比し、EML4側は様々な融合点が存在するため(申請者のグループら、Cancer Res 68:4971, Clin Cancer Res 14: 6618)、これら様々なin-frame fusionを全て検出することのできるmultiplex RT-PCR法を開発した。さらに我々が別に発見したKIF5B-ALK融合キナーゼを含め(Clin Cancer Res 15: 3143)、これら融合型ALKキナーゼの全てのバリアントを検出するmultiplex RT-PCRを用いて我々はALK肺がん研究会におけるプロスペクティブ診断活動を行った。実際に、気管支洗浄液や気管支擦過液、喀痰、胸水、心嚢液など、851例の症例から得られた916種類の臨床試料からそれぞれcDNAを調整し、内部コントロール遺伝子であるRNasePの発現を検討した結果、計808種類の検体(754例)が十分な質のcDNAであることが確認された。 本解析の結果34検体(32症例)がEML4-ALK陽性である事が確認され、その内訳はvariant 1が19例、variant 2が1例、variant 3が10例、および新規バリアントが各1例ずつであった。EML4-ALK陽性例は全て肺腺がんであり、腺がんの約6%に陽性で、平均発症年齢は48.3才であり、EML4-ALK陰性例の65.5才に比べて有意に若年発症であった(P <0.001)。非喫煙者あるいは軽度喫煙者に多いことも示された(P <0.001)。また陽性例14例が海外のALK阻害剤臨床試験に参加したところ奏功率は100%であった。
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