研究概要 |
本研究では、呼吸器の発生の基本原理を解明するため、気道上皮組織における線毛細胞、クララ細胞、神経内分泌細胞の分化プログラム、数量的バランス制御機構の解明を行なっている。今年度は、昨年度作成したSPNC細胞の選択的な除去ができる遺伝子改変マウス,UPK3-STOP-DTAの解析と、前駆体細胞から線毛細胞への分化過程の次世代シークエンサーを用いた時系列的なトランスクリプトーム(TC)解析に取り組んだ。トランスジェニック技術によって作成したUPK3-STOP-DTAマウスは2系統用いた。薬剤誘導的にSPNC細胞を選択的に除去するためにタモキシフェン(Tmx)誘導で内胚葉上皮にCre組み替え活性を誘導できるでFoxa2-CreERt2と掛け合わせた。E14.5,16.5の2回Tmx注射をおこない、E17.5で肺を回収して、SPNC細胞の消失とNE細胞の分布を観察した。しかしながら、SPNC細胞の除去が不十分であることが観察され、組み替えが不完全であることが疑われた。そこで改めてNkx2.1-CreERt2マウスとの掛け合わせを行った。同様にTmx注射、サンプリングをおこない、SPNC細胞を観察したところ顕著な消失を確認できた。これからNE細胞の分布の解析を行う。一方、理化学研究所オミックス領域(OSC)の協力のもと、初代培養系の前駆体細胞から線毛細胞への分化過程を、次世代シークエンサーを用いて時系列的にTC解析した。解析は現在も続けており、線毛細胞分化の制御の候補が上がってきている。また、今回の解析結果は理研OSCの主導するFANTOM5プロジェクトの一端としてNature誌(Vol.507,462-470)に掲載された論文に貢献した。本研究で掲げた研究計画を完全に終えることはできていないが、大半を完了し、既に論文も発表できている。また、現在解析中のデータも近日中に投稿予定である。
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