研究概要 |
本年度は、我々が独自に作製したadenosine 2A-receptor antagonists(以下A2A-R阻害薬)の分子作用機序に着目し培養細胞実験を中心に検討を進めた。 A2A-R阻害剤が添加2時間後からLC3-II/actin比を増大させることから、オートファジー促進または阻害作用があることを事前に確認していたため、まずオートファジー調節機構として最も影響力の大きいPI3K/akt/mTOR経路へのA2A-R阻害剤作用を評価した。A2A-R阻害薬(No.4,5,7,8)添加により、p70S6、4E-BP1のリン酸化は活性化されなかったため、mTOR阻害作用はないと考えられた。さらにNo.8 50μMにて、E64dとPepstatin-A添加により、オートファジーの流れを再評価したところ、E64d+pepstatinA投与にてLC3-II/actin比はNo.8単独投与に比し増大しており、オートファジーの流れが亢進していることが示唆された。しかしNo.8の飽和濃度を再検討する必要があると考えられる。 さらに免疫染色にてA2A-R阻害薬の薬理作用を評価した。A2A-R阻害剤(No.4,8)投与により、細胞内にLC3陽性顆粒の著明な増加、AMP1(or LAMP2)陽性顆粒(lysosome)、およびGM130陽性構造物(ゴルジ装置)が増加しており、同時に内部構造均一な2μMを越える巨大顆粒を核周囲に認めた。同構造物の周辺は、LAMP1、L鯉AMP陰性であり、LIMP2陰性であった。 以上から、A2A-R阻害剤は核周囲に巨大空胞性顆粒を形成することでオートファジーを機械的に調節している可能性が考えられた。現在PDモデルマウス(変異型α-synucleinトランスジェニックマウス)のbleedingを終え、マウスへの投与実験を6月より開始する予定である。
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