研究課題/領域番号 |
23689049
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田久保 圭誉 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50502788)
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キーワード | 造血幹細胞 / 白血病幹細胞 / ニッチ / 低酸素 / メタボローム |
研究概要 |
本研究では、白血病幹細胞の維持におけるPhd/VHL/HIF-1α制御系の機能を手がかりとして、低酸素環境にある白血病幹細胞のエネルギー代謝特性と微小環境(ニッチ)を明らかにし、これらを制御する標的療法開発を目的とする。この目的のためにPhd/VHL/HIF-1α制御系の多彩なノックアウトマウス由来の白血病in vivo誘導モデルと、新規の白血病幹細胞のマーカーを見出してそれを指標とすることで、HIF-1α経路の白血病幹細胞システムへの寄与の解明と、その活性を指標にした白血病幹細胞の純化法の開発を行う。さらに骨髄内でHIF-1α陽性の白血病幹細胞が局在するニッチの構成細胞と構成分子を明らかにする。これらの知見を基に、低酸素ニッチからのシグナルを標的とすることで、未だ根絶が難しい各種白血病幹細胞の根絶法の端緒をつかむ。 本年度はまずマウス慢性骨髄性白血病(CML)を白血病幹細胞のモデル系として検討を行い、CMLIの白血病幹細胞分画は、より分化した白血病前駆細胞や分化マーカー陽性の白血病細胞に比べて低酸素状態にあり、HIF-1αを発現していることを見いだした。興味深いことに低酸素マーカー陽性度は正常の造血幹細胞よりも白血病幹細胞分画ではるかに高かった。すなわち、白血病幹細胞は正常幹細胞よりも低酸素応答シグナルについて強い依存をしていることが示唆され、しかも極度の低酸素状態に耐えるための特殊なエネルギー代謝を行っていると考えられる。また、HIF-1αノックアウトマウス由来の造血幹細胞からBCR-ABLによって誘導されるCMLをモデルとして白血病幹細胞を作成したところ、HIF-1αを欠損すると白血病幹細胞の形成が阻害され、マウスの生存期間が延長することが確認された。従って本制御系を治療標的とする妥当性が支持された。さらにCML,白血病幹細胞抗原のスクリーニングを行い、候補分子を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CML白血病幹細胞が極度の低酸素状態にあることから分子状酸素がニッチ因子となることを見出した。その分子基盤候補としてHIF-1αを同定し、CML白血病幹細胞の形成に必要であることを分子遺伝学的に明らかにすることができた。さらにCML白血病幹細胞抗原のスクリーニングの結果有望な候補分子を得ており、当初の計画以上の進展をみている。
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今後の研究の推進方策 |
HIF-1αに加えてその制御系分子がCML幹細胞の形成と維持においていかなる役割を果たすかについての解析をノックアウトマウス中心に進める。また、新規CML、幹細胞抗原のさらなる選別と制御系による維持への寄与の有無を検討する。さらにヒト患者検体でのこれら制御系およびCML幹細胞抗原の発現と病態との相関を解析する。
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