研究課題/領域番号 |
23689050
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横山 明彦 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10506710)
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キーワード | 白血病 / 転写 / エピジェネティクス / がん |
研究概要 |
染色体転座によって形成されるMLLキメラ遺伝子は予後不良の白血病を引き起こす。MLLの融合パートナーであるAF4やENLはP-TEFb転写伸長因子と複合体(略称AEP:AF4/ENL/P-TEFb)を形成する。MLLの融合パートナーは60種類以上あるが、主要なMLLキメラはすべてAEPを標的クロマチンに恒常的にリクルートする事で転写を恒常的に活性化し、白血病を引き起こす。本研究はMLL白血病の成立に最も重要な働きをしているAEP複合体の作用機序の解明を目指す。我々はMLLとAEP構成因子であるAF4やAF5q31からなるキメラ遺伝子(MLL-AF4及びMLL-AF5q31)を用いてマウス骨髄細胞を不死化するトランスフォーメーションアッセイを行い、AEPにおける不死化に必須な機能ドメインを同定した。具体的には、MLL側の不要なドメインを取り除いたものとAEPの機能ドメインの一つを融合したMLL(mininum)キメラ遺伝子を多数作製し、それらの変異体でトランスフォーメーションアッセイ用いた解析を行った。我々は様々なキメラ変異体を解析する事で、AF4及びAF5q31に含まれる200残基程の領域が重要である事を見いだした。この領域はこれまでに行われていたMLLL部分全長を含むキメラ遺伝子の解析では見つからなかった領域であった。この事は、通常のMLLキメラではなく、我々が作製したMLL(minimum)キメラで解析する事によって、これまでに見る事の出来なかった機能ドメインの機能を見る事ができるという事を示しており、我々のとったユニークなアプローチが独自の知見を生み出したといえる。今後、このMLL(minimum)キメラを用いる事によって他のMLLキメラにおける白血病化に必要な様々な機能ドメインを発見する事ができると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MLLとAEP構成因子のキメラによる造血細胞の不死化のメカニズムについて、これまでの方法では見いだせなかった機能ドメインを見いだしており、研究は順調に進展している。さらに、我々はこの不死化に必要なドメイン構造を200残基程度の小さな領域にまで狭めた。このドメインは我々のユニークなアプローチでのみ発見するこの出来た独自の知見であり、この点で世界をリードしていると言える
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今後の研究の推進方策 |
我々は、AEP構成因子に含まれる白血病化に必須の機能ドメインを見いだした。この構造はおそらく何らかの共作用因子と結合していると考えられるため、今後はアフィニティー精製等の手法を用いて結合因子の同定に取り組む。結合因子の探索にはある程度の困難が予想される。AEP複合体については、従来の生化学的な手法を用いた結合因子の探索がやり尽されており、おそらく何らかの新しい手法を用いないと新規に結合因子を同定する事は難しいと予想される。 我々は、従来法とは異なる精製条件を検討する事で対処する。
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