研究概要 |
本研究は、遺伝的要因が想定される希少な先天性疾患を対象に、次世代解析システムを駆使して疾患責任遺伝子を同定し、疾患発症メカニズムの解明と診断法・予防法・治療法を確立することを目的とする。エクソーム解析は、昨年度までの二次解析のフローに改良を加え、非常に効率よく責任遺伝子を同定することが可能となった。本年度は、Coffin-Siris症候群におけるSMARCB1, SMARCA4, SMARCE1, ARID1A, ARID1B (Nat Genet, 2012),ミトコンドリア複合体III (CIII) 欠損症におけるUQCRC2 (Hum Mutat, 2013), 短体幹症におけるPAPSS2 (J Med Genet, 2013) の7つの新規疾患遺伝子を同定した。このうち、Coffin-Siris症候群と短体幹症は、エクソームの結果から罹患者に共通して変異を認める遺伝子を探すcommon strategyで責任遺伝子を同定した。CIII欠損症は、連鎖解析とエクソームの組み合わせにより同定した。近親婚家系であったため、常染色体劣性遺伝形式を想定し連鎖解析を行った。それにより同定された候補領域内に、患者3名のみにUQCRC2遺伝子のホモ接合性変異を認めた。本遺伝子は、CIIIの一構成成分をコードするタンパク質であり、通常二量体を形成する。さらに、複合体I, IVと共にスーパー複合体を形成し、一つの酵素として働く。結晶構造のモデル解析により、本変異がUQCRC2の二量体形成を障害することが予測された。さらに患者繊維芽細胞ではCIIIの酵素活性が低下していること、さらにスーパー複合体の形成も障害されていることを証明し、本遺伝子が本症の原因であることを明らかにした。これらの成果から、次世代解析システムを駆使した疾患責任遺伝子の同定法はほぼ確立できたと言える。
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