研究概要 |
レシピエントとなるCOL17欠損マウスおよびCOL7不完全ヒト化マウス、COL7完全ヒト化マウスの繁殖を行った。これらの成体マウスが得られた時点で、以下の幹細胞移植実験を行った。 (1)従来の経静脈投与と比較して生着率の向上が期待でき、かつ臨床応用を考慮した際に治療的手技として確立されている方法として、GFP+Tgマウス由来の骨髄細胞を経骨髄移植した。フローサイトメトリーでは、経静脈投与移植群と比較して経骨髄移植群では同等かそれ以上の末梢血生着が確認された。創傷治癒部、およびびらん治癒部の皮膚を検討したところ、GFP陽性表皮角化細胞が約0.2%確認され、COL17欠損マウス群においてはRT-PCRにて欠損COL17の回復が確認されたが、マウスCOL7については回復が確認されなかった。臨床症状および生命予後の変化については、現在経過観察中である。 (2)骨髄細胞や脂肪組織より分離培養したGFP+Tgマウス由来の間葉系間質細胞を骨髄腔内投与した。生着を確認するために4週間後に骨髄細胞を採取し、GFP陽性間葉系間質細胞の有無をフローサイトメトリーで解析したが、大部分の移植マウスにおいてGFP陽性細胞は確認されなかった。また、投与後の創傷上皮化部、およびびらん治癒部の皮膚を検討したが、GFP陽性表皮角化細胞やCOL17の回復は確認されなかった。 (3)ヒト問葉系間質細胞を免疫不全NOGマウスに経骨髄移植した。移植後の創傷治癒部において、HLA classI陽性細胞が真皮にわずかに確認された個体が5匹中1匹でみられたが、表皮では全く検出されなかった。また、組織RT-PCRにおいては5匹中2匹でhuman GAPDH陽性、5匹中1匹でhuman COL17陽性であったが、現時点で他のヒト皮膚基底膜蛋白の発現は確認されなかった。よって、現在は間葉系間質細胞を皮膚へrecruitすると報告されているHMGB1蛋白(Tamai K et al.,2011)およびCCL27(Sasaki M,Fujita Y et al.,2008)を併用した移植実験系を施行し、解析中である。
|