レシピエントとなるCOL17欠損マウスの繁殖を行った。これらの成体マウスが得られた時点で、以下の幹細胞移植実験を行った。 ① 従来の経静脈投与と比較して生着率の向上が期待でき、かつ臨床応用を考慮した際に治療的手技として確立されている方法として、骨髄細胞を経骨髄移植した。経静脈投与移植群と比較して経骨髄移植群では同等かそれ以上の末梢血生着が確認された。GFP陽性表皮角化細胞が約0.2%確認され、COL17欠損マウス群においてはRT-PCRにて欠損COL17の回復が確認された。 ② 骨髄移植を行ったCOL17欠損マウスの皮膚より、骨髄由来とそれ以外の表皮角化細胞をそれぞれ回収し、遺伝子発現の差違をRNAマイクロアレーで検討した。合計23446プローブが解析可能であり,そのうち遺伝子発現に2.0倍差以上を認めたプローブが57同定された. ③ ヒト間葉系間質細胞を免疫不全NOGマウスに経骨髄移植した。移植後の創傷治癒部において、HLA classI陽性細胞が真皮にわずかに確認された個体が5匹中1匹でみられたが、表皮では全く検出されなかった。また組織RT-PCRにおいては5匹中2匹でhuman GAPDH陽性、5匹中1匹でhuman COL17陽性であったが、現時点で他のヒト皮膚基底膜蛋白の発現は確認されなかった。そこで、間葉系間質細胞を皮膚へrecruitすると報告されているHMGB1蛋白を併用した移植実験系を施行したところ、創傷治癒過程の中期で創傷治癒の促進が確認された。RT-PCRにおいてもhuman COL17陽性率の改善がみられた。 ④ 臨床応用に向けて、名古屋大学皮膚科および小児科と共同し、重症表皮水疱症患者に対する造血幹細胞移植療法の臨床試験を倫理審査委員会に提出した。現在審議が継続中である。
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