研究課題/領域番号 |
23689054
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小川 靖 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10567754)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 皮膚病理学 / エピジェネティクス / ケミカルバイオロジー |
研究概要 |
LEDGFをマウス表皮内で過剰に発現させるため、ケラチンK5のプロモーター下にLEDGFのcDNAをクローニングした発現ベクターを作成する。HaCaT細胞、ヒト正常角化細胞での発現を確認した後に、ICRマウスをバックグラウンドとして、トランスジェニックマウスを作成した。 ゲノミックPCRを行い、トランスジェニック化されたマウスを樹立する。表皮のウエスタンブロッティングと免疫組織染色でLEDGFの過剰発現を確認した。トランスジェニックマウスが予想外の攻撃的性格を示し、新生仔マウスの食殺、離乳期前仔マウスの殺戮行動等が続いた。このため、病態モデルを確立するための実験を行えるだけのトランスジェニックマウスの確保に、想定した以上の日数を要した。 テープによるストリッピング、12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)の塗布、などによる皮膚病変の抽出を試みたが、安定した結果が得られなかった。このため、外来性LEDGFの発現を再建したところ、低下していた為、再度、外来性LEDGF を高発現するマウスの樹立を行った。今後は、発現がより改善されたマウスを用いて皮膚病変の誘発を行っていく。 また、一方で、新規治療薬のリードコンパウンドを探索するため、化合物スクリーニング系の開発を行った。申請者らの樹立したLEDGF-HaCaTと目的化合物の存在下で培養し、上清中のIL-6をに定量することにより、ケラチノサイトの活性化を測定することができる。この性質を利用して、乾癬病変抑制効果をもつ化合物をすスクリーニング系の作成を試みた。実験系のコントロールとしてはp38阻害剤であるSB203580を使用した。アッセイ系のための予備実験を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トランスジェニックマウスが当初攻撃的性格を示し、繁殖が困難であった事、また、その後、匹数を増やしていく中で、導入したLEDGFの発現が低下したため、動物実験の進捗が遅れてしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
I. K5-LEDGF マウスの解析 前年度に開始した解析を本年度中に完結する。 II. 有用低分子化合物ライブラリーの探索と病態モデルにおける検証 ライブラリーのスクリーニング系の検証を行い、アッセイ系が適切である事を確認する。 LEDGFの過剰発現によって惹起されるKCの乾癬様変化を回復しうる低分子化合物を探索するため、複数の化合物ライブラリーを準備する。1)既知のクロマチン修飾酵素阻害剤のライブラリーとして、TSA、SAHA、Valproic Acid、ITSA1、M344、MC 1293、Piceatannol、Sirtinol、Splitomicin、Sodium Butyrate、UNC0638、BIX-01294、Butein、Quercetin Dihydrate、Resveratrolなど文献及びデータベース上で検索しうる化合物を収集し、ライブラリー化する。また、2)米国FDAで認可された化合物を主体とした機能が既知である化合物のライブラリー(2000化合物)、3)国内の公的なライブラリーより、化学物質の貸与を受ける。これらのライブラリーから得られた候補化合物をLEDGF-HaCaTを用いた遺伝子発現解析、ChIPによるクロマチン修飾の解析により、乾癬様病態抑制機序を同定する。また、K5-LEDGFマウスに投与した際の乾癬様病変の抑制効果を検討する。
|