研究概要 |
内用療法への応用が考えられるアルファ放射体のなかでも、半減期7.2時間の211Atは、最も臨床応用が期待されるアイソトープである。しかし半減期が短いゆえにその利用はサイクロトロンの存在する製造拠点近辺に制限されている。本研究では、211Atの広範囲における国内実用化を目指し、有機溶媒抽出系を用いた211Rn/211Atジェネレータの製造を試みた。 209Bi+7Li系による209Bi(7Li, 5n)211Rn反応により211Rnを製造した。照射後のBi標的から211Rnを精製分離する手法には、有機溶媒抽出系を利用した。その結果、標的内に製造された211Rnのうち82%を有機相へ抽出することができた。また核反応副生成物の210At等のRIについては、抽出の過程で定量的に211Rnと分離でき、有機相へは211Rnのみが選択的に抽出できることを見いだした。 次に有機溶媒中に存在する211Rn から壊変生成した211Atを回収する方法として、メタノール系での逆抽出を検討した。種々の検討の結果より、N-ハロスクシンイミドを酸化剤としてメタノール中に添加することで効率的に211Atを回収出来ることを見いだした。特に、N-ブロモスクシンイミドを添加したメタノールで逆抽出した場合、211Atのメタノールへの分配比が55という高い値を得た。 最後に、逆抽出で回収した211Atを用いた標識抗体を作成し、動物実験による標識薬剤の体内分布を行った。投与後1時間で解剖した結果は、昨年度209Bi(4He, 2n)211Atで直接製造した211Atの標識化合物で行った動物実験で得られた結果とほぼ同様であった。 以上から本研究によって有機溶媒抽出系を利用した211Rn/211Atジェネレータが製造可能であること、またミルキングして得られる211Atを用いた内用療法が可能であることが示された。
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