研究課題
呼吸性移動ファントムの駆動には、人体をより再現するようにバルーンを用いたユニークな方法を採用した。バルーンによる腹部の動きは、人体の動きに近かったが、時間と共に空気が抜けたり、腹部の動きをコントロールする空気の流量を調整しないと、ファントムの動きが再現しないことがわかった。それゆえ、バルーンの材料を見直したり、空気流量の調整機構の開発が必要になった。RADPOSの位置検出精度評価を陽子線治療室の寝台を用いて実施した。陽子線治療では、真鍮製のコリメータやノズルに金属が用いられているため、位置検出精度の低下が懸念されたが、x方向では0.9±0.8 mm、y、z方向では、0.4±0.4 mm、0.6±0.5 mmと、メーカー保証領域内においては、仕様の1.4 mm rmsを満足した。ただ、光子線治療室の結果に比べると誤差が大きかった。また、RADPOSは100 ms毎に位置検出できることから、寝台駆動速度について動的検証も実施した。RADPOSにより、0.1 mm/s以下の精度で速度を評価できたことから、体動評価にも十分使えることが示唆された。また、RADPOS位置検出において陽子線照射による放射線ダメージも観測されなかった。コーンビームCTは、位置によりCT値は不均一性を有することが今までのファントムスタディにおいてわかっており、特に、ビーム軸から遠い辺縁で体軸方向に急峻なCT値変化がある場合には、CT値の不均一性の問題が懸念された。しかしながら、胸部などでは、急峻な構造変化もないことから、CT値の体軸方向の位置依存性が小さく、線量分布計算への影響が小さいことがわかった。それゆえ、ビーム中心軸から離れた位置に極端な構造変化が存在する場合には注意を必要とするが、コーンビームCT画像を治療計画用として利用可能であることがわかった。
3: やや遅れている
呼吸性移動ファントム駆動ソフト並びに呼吸性移動ファントム動作不良が判明した。それゆえ、それらの不具合調査や改修に加えて再試験が必要となり、呼吸性移動ファントムを用いた研究に関してはやや計画より遅れてしまった。しかしながら、これは、より人体を再現しようとした新しい試みの結果であり、より良いものを開発する上では有意義な不具合であった。
呼吸性移動ファントム並びに呼吸性移動ファントム駆動ソフトの改良のために時間がかかり、研究の進捗に支障を来したが、開発業者と不具合対策について検討を重ね、仕様を見直すことにした。これらを踏まえ、来期の研究計画を再検討し、方法や研究スケジュールなど見直し、成果を上げるための最善策を講じる予定である。
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