研究概要 |
本研究は以下の4つの領域で構成されている。 1)新規蛍光プローブを用いた肝胆膵癌手術診断法の開発:γ-glutamyltransfbrase(GGT)で活性化される蛍光プローブを肝切除標本の割面に散布することにより、肝細胞癌20/43結節(47%)、肝内胆管癌6/6結節(100%)、大腸癌肝転移34/35結節(97%)で肉眼的蛍光が確認された。 2)新規蛍光プローブを用いた膵管・膵液漏同定法の開発:患者体外サンプルを用いて、膵液中のキモトリプシノゲンを特異的に標識する蛍光プローブを作成した。これを、手術中に膵断端を転写した濾紙(n=30)に散布したところ、16例で主膵管のみが、7例で主膵管と周囲の膵実質が蛍光標識され、残る7例では膵液の蛍光を認めなかった。主膵管あるいは膵断端に蛍光を呈した24例では、いずれにも蛍光を認めなかった7例に比べて術後膵液漏(ISGPF grade B以上)の頻度が高かった(57%vs.0%,P=0.01)。 3)ICG蛍光法を用いた肝癌手術診断法の基礎的検討と光線力学的治療への応用:肝細胞癌切除標本の癌部と非癌部組織片の遺伝子発現解析を行い、癌部肝組織に対する癌組織の遺伝子発現量の比(T/N)を求めた。Indocyanine green(ICG)蛍光法により切除標本上で癌組織が蛍光を呈した13結節では、周囲肝実質のみリング状の蛍光を呈した6結節に比べて、ICGの取り込みに関与するNACPとOATP8のT/Nが高い傾向を認めたが(中央値[範囲];NACP.O.93[<0.01-1.8]vs0.12[0.01-0.47],P=0.02;OATP8,0.54[0.01-1.9]vs0.06[<0.01-0.89],P=0.16)、細胆管へのICG排泄に関与するMRP2では両群に差を認めなかった。また、ヌードマウスの皮下にヒトHCC培養細胞を移植し、あらかじめICGを静注し近赤外レーザー(823nm)を3分間照射した群(ICG+NIR+,n=10)、ICG静注のみを行った群(ICG+NIR-,11=8)、近赤外レーザー照射のみを行った群(ICG-NIR+,n=4)で腫瘍径の変化を観察した。近赤外レーザー照射当日、3日後、9日後の平均腫瘍径(mm2)はICG+NIR+群で217、249、1058、ICG+NIR-群で402、1164、4272、ICG-NIR+群で127、967、3596であり、ICG+NIR+群では他の2群に比べて有意に増殖が抑制されていた(P<0.01)。 4)日常臨床への普及を目指した次世代赤外観察用硬性鏡システムの開発:腹腔鏡下胆摘術97例蛍光胆道造影を行った結果、Calot三角剥離前/後における胆嚢管-総肝管合流部の同定率はそれぞれ76%/93%と良好であった。また、次世代システムを用いて、ICG蛍光法で切除予定肝区域を蛍光標識する新たな区域同定法を確立した。
|