研究課題/領域番号 |
23689060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石沢 武彰 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10422312)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | インドシアニングリーン / 蛍光ナビゲーション / 肝切除 / 膵切除 / 腹腔鏡手術 / 肝癌 / 膵癌 / 胆嚢摘出術 |
研究概要 |
1) 新規蛍光プローブを用いた肝胆膵癌手術診断法の開発:γ-glutamyltransferase(GGT)で活性化される蛍光プローブを切除標本に散布し、肝細胞癌の約50%、肝内胆管癌および大腸癌肝転移のほぼ全てを同定できた。また、胆管癌の約30%, 膵癌の約50%で、癌部の蛍光強度が非癌部よりも2倍以上高くなり、胆膵癌の標識にも応用できる可能性が示された。 2) 新規蛍光プローブを用いた膵管・膵液漏同定法の開発:glutamyl-phenylalanine hydroxymethyl rhodamine greenを新規に作成。これを患者膵手術(n=30)に際して膵断端を転写した濾紙上に散布してイメージングを行い、膵液の漏出部位とその蛋白分解酵素活性をリアルタイムに評価した。また、ブタを用いて体腔内で膵液漏出部位を同定するシステムを構築した。 3) indocyanine green (ICG)蛍光法を用いた肝癌手術診断法の基礎的検討と光線力学的治療への応用:遺伝子発現解析および免疫染色を用い、ICG蛍光法で癌組織が蛍光を呈す肝細胞癌では、ICGの細胞内取り込みに関与するNACPやOATP8の発現が維持されているものの、胆汁排泄機構に障害があるために、ICGが癌組織に滞留することを解明した。光線力学的治療については、最大の腫瘍縮小效果を得るために、近赤外レーザーの照射強度と時間を最適化する作業を継続している。 4) 日常臨床への普及を目指した次世代赤外観察用硬性鏡システムの開発:腹腔鏡下胆摘術8例で、従来の標準画質の硬性鏡システムとハイビジョン画質のシステムの両者を用いて蛍光胆道造影を行い、ほぼ同等の胆管描出能が得られることを確認した。また、腹腔鏡下肝切除10例でICG蛍光法による肝癌同定、膵脾切除6例で血管造影を行い、それぞれ肝癌描出能と血管同定能を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 新規蛍光プローブを用いた肝胆膵癌手術診断法の開発では、肝腫瘍に加え胆膵癌でも腫瘍を蛍光標識できる可能性が示唆された。 2) 新規蛍光プローブを用いた膵管・膵液漏同定法の開発では、手術中に迅速に膵液漏出部位を同定するための方法が確立されつつある。また、手術後のドレーン排液の蛋白分解酵素活性を測定するためのシステムも構築されつつあり、術後管理における本法の有効性を評価するための臨床試験を行う準備が整った。 3) ICG蛍光法を用いた肝癌手術診断法の基礎的検討と光線力学的治療への応用では、遺伝子発現解析に加え免疫染色を用いて、肝細胞癌がICGで標識される機序を解明することができた。また、光線力学的治療の開発では、本法による一定の腫瘍縮小効果が確認され、条件設定を行う研究段階に移行している。 4) 日常臨床への普及を目指した次世代赤外観察用硬性鏡システムの開発では、最新のハイビジョン装置を用いて、腹腔鏡下胆摘術だけでなく肝切除、膵切除において、ICG蛍光ナビゲーションの応用を進めている。一定の有効性が示されており、蛍光ナビゲーションの知見を実臨床に還元するという目標が達成されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
1) 新規蛍光プローブを用いた肝胆膵癌手術診断法の開発では、ICG蛍光法による肝癌診断の機序を同定した手法を踏襲して、免疫染色および遺伝子発現解析を用いて、GGTプローブにより癌組織が蛍光標識される機序を解明する。また、臨床応用の可能性が示唆されれば、本プローブを患者体内で使用するための研究開発ロードマップを作成する。 2) 新規蛍光プローブを用いた膵管・膵液漏同定法の開発では、体外サンプルに対し本法を用いることで、術後膵液漏の発生を予防し効率的にドレーン管理を行うことができるか評価するための臨床試験を実施する。また、本プローブを患者体腔内に投与することを目標とし、大型動物を用いて膵液漏の同定能を体腔内で評価する。 3) ICG蛍光法を用いた肝癌手術診断法の基礎的検討と光線力学的治療への応用では、本法により転移性肝癌(腺癌)の周囲が蛍光を呈す機序について、蛍光顕微鏡および免疫染色を用いて解明する。また、光線力学的療法の開発では、近赤外光の強度と照射時間、ICGの投与条件を最適化する。 4) 日常臨床への普及を目指した次世代赤外観察用硬性鏡システムの開発では、さらに多様な術式に蛍光ナビゲーションを用いた肝癌、胆管、膵液漏の描出法を応用し、臨床における安全性と有効性を評価する。
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