研究課題
癌におけるDNAメチル化異常の特徴として、ゲノム全体の低メチル化と、遺伝子プロモーター領域の部分的な高メチル化がある。ゲノムワイドな低メチル化は、がん原遺伝子発現や染色体不安定性などを介して、様々な癌種の発癌・浸潤転移において重要な役割を果たす。LINE-1はゲノム全体の約17%を占める転位因子であり、LINE-1のメチル化レベルはゲノム全体のメチル化レベルの指標になる。我々は、200例以上の食道扁平上皮癌のLINE-1メチル化レベルを解析し、LINE-1低メチル化症例は予後不良であることを明らかにしてきた (Ann Surg, 2013)。しかし、LINE-1低メチル化が癌悪性度に寄与するメカニズムについては明らかになっていない。今回、LINE-1低メチル化とDNAコピー数異常の関係を評価するために、LINE-1低メチル化食道癌症例と高メチル化症例を用いてCGHアレイ解析を行った。その結果、LINE-1低メチル化症例では、CDK6など癌関連遺伝子を含む領域において高頻度にコピー数の増幅・欠損を認めた(P=0.0013)。また、食道癌切除症例においてLINE-1メチル化レベルとCDK6発現は有意に相関していた(mRNA level:P=0.039、protein level:P=0.0001)。食道癌細胞株においても同様の結果が得られ、FISHによってCDK遺伝子増幅とLINE-1メチル化レベルとの関連が確認された。食道癌128例の免疫染色を行った結果、CDK6発現症例は統計学的に有意ではないものの予後が不良であった(P=0.064)。また、CDK6発現を交絡因子として解析したところ、LINE-1低メチル化の予後に対する影響は減弱した(ハザード比:2.96→2.32)。これらの結果から、LINE-1低メチル化症例においては、CDK6に代表とされるような癌関連遺伝子の増幅がおこり、悪性度の獲得に繋がっていると考えられた。これらの内容を、Clinical Cancer Researchに発表した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Clin Cancer Res
巻: 20 ページ: 1114-24
10.1158/1078-0432.CCR-13-1645
Surg Today
巻: In press ページ: In press
PMID: 24150097