研究課題
健康長寿の獲得には骨関節疾患の克服は急務であるが、新規治療法開発の為の病態解明は十分ではない。老化・ホルモン欠乏・メカニカルストレスなど種々の後天的要素により発症・進行する骨関節疾患の多くでは、遺伝子(ゲノム情報)自身には異常を認めないものの、遺伝子発現の量的・質的変動(転写調節機構の破綻)が病因と言える。遺伝子発現調節メカニズムの一つに、近年解明され始めたエピゲノム制御(ゲノム修飾によるクロマチン構造変換と転写調節)があり、既に癌治療には応用され始めているが、骨関節疾患におけるエピゲノム制御は全く不明である。そこで、骨関節疾患におけるエピゲノム制御の分子基盤を明らかにできれば、新たな治療法開発の一助となることが期待できると考え、本研究の着想に至った。昨年度の様々な疾患モデル作成方法の推敲の結果、本年度は、C57BL6系統の8週齢メスマウスに対して、CAIA(Mouse Collagen Antibody-Induced Arthritis)による関節リウマチモデルを作成した。コントロール群、LPS投与群、CAIA群の3群(各々n=4)において足関節組織を回収し、足関節周囲腫脹部(およびそれに解剖学的に該当する組織)からRNAを抽出した。これらのRNAを用いて遺伝子発現マイクロアレイを施行し、3群間における遺伝子発現プロファイルの変化を確認した。その結果、コントロール群とLPS群との間では大きな発現変動は認めなかったものの、LPS群とCAIA群とを比較した結果、2倍以上(p<0.01)の発現変動を認めたプローブが6155認めた。これらの遺伝子をGSEAで解析し、REGULATION_OF_TRANSCRIPTIONに含まれる遺伝子群に対しバリデーションを行い、候補遺伝子の同定に成功した。
3: やや遅れている
候補遺伝子の同定には成功したものの、本遺伝子改変マウスの確立に時間を要したため
現在遂行中の遺伝子改変マウスの微生物除去および凍結胚の融解により、組織特異的遺伝子欠損マウスの作出を行う事が可能となると考えられる。作出した遺伝子欠損マウスを用いてCAIAによる関節炎を誘導し、X線学的・組織学的・生化学的評価を行う。
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