本研究では、慢性疼痛や癌性疼痛の治療補助に頻用されるアセトアミノフェン、抗てんかん薬(ガバペンチン、クロナゼパム)、プレガバリンの痛みに関与すると報告されているTRPチャネルに対する直接作用を、電気生理学的手法を用いて解明すること目的とした。 まず、アセトアミノフェンのTRPチャネルに対する作用に関して検討した。当初研究を予定していたアセトアミノフェンのTRPA1に対する作用に関しては、他施設より、アセトアミノフェンそのものではなく、その代謝産物であるN-acetyl-p-benzo-quinoneimine (NAPQI)およびp-benzoquinone(p-BQ)がTRPA1に作用することが報告された。そのため、H25年度はTRPV1に対するアセトアミノフェン、NAPQI、p-BQ の作用の検討を行った。TRPV1は主に侵害受容ニューロンのAδ-およびC-fiberにおいてTRPA1の多くが共発現するチャネルであり両チャネルとも痛みに関与することが報告されている。しかしアセトアミノフェン、NAPQI、p-BQのいずれの物質もTRPV1に対する直接作用を持たないことが判明した。痛みの研究ではTRPV1が先行しているが、近年、炎症や神経因性疼痛へのTRPA1の関与が多く報告されている。本研究のアセトアミノフェンの作用がTRPV1ではなくTRPA1に関与しているということは、慢性疼痛や癌性疼痛等の痛みに関してはTRPA1が非常に大きな役割を果たしている可能性を示唆しており、TRPA1に関与する新薬の開発が期待される。 その他、抗てんかん薬(ガバペンチン、クロナゼパム)、プレガバリンのTRPA1およびTRPV1に対する作用に関しても検討したが、いずれの物質も直接作用は及ぼさなかった。
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