研究概要 |
Trio Binding Protein (TRIOBP)はアクチン構造を制御する分子で、その変異はヒトおよびマウスで難聴を引き起こす。TRIOBPには複数のアイソフォームが存在するが、それらのうちTRIOBP-4(以下T4)がアクチンを束化することで内耳不動毛の根を形成することを我々は示した。しかしアクチンが正常に機能するためには束化のみならず、重合や網目構造、架橋といった様々な制御が必要である。TRIOBPには構造の全く異なる複数のアイソフォームが存在し、各アイソフォームはそれぞれが独自のアクチン制御機能も持つ可能性が示唆されている。本研究ではTRIOBPのドメイン構造、各アイソフォーム(-1,-4,-5)の機能および、これらTRIOBPのアクチン束化機構を解明し、難聴治療およびアクチン細胞骨格の関与する生命現象の理解につなげることを目的としている。 これまでにT4の部位欠損変異体を用いてそのアクチン束化機構の詳細な解析を行い、T4に2つある特徴的な反復配列(R1ならびにR2)がそれぞれアクチン束化能を持っていることを見いだした。 また、TRIOBP-1,-4,-5(以下T1,T4,T5)の各アイソフォームの部位欠損型変異体を作製、細胞内に発現させ、アクチン細胞骨格との共局在および細胞形態への影響を解析し、各アイソフォームのアクチン結合部位の特定と細胞内での機能解析を行った。この他、蛍光ゲル濾過を用いたタンパク精製法によるTRIOBPの精製条件検定を行い、その解析からT1,T5を可溶化する条件を見いだした。また、有毛細胞を含む内耳器官を培養し、遺伝子銃を用いてこれに各種外来遺伝子を再現よく導入する実験系を構築した。これらに加えてin vivoの解析のためにT1およびT5のアイソフォーム特異的なKOマウスの作製を進めており、今年度中に解析に進む見込みである。
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