本研究は、角膜の細胞の老化に関わる変化を見ることを目的としている。老化した細胞や培養細胞ではDNAレベルの変化なしに遺伝子発現が変化するエピジェネティクス化が生じることが近年明らかになっているが角膜疾患については、まだ解明されていない。本年度は、角膜組織幹細胞とエピジェネティクス変化の関係に焦点をしぼり、幹細胞におけるDNA、ヒストン、クロマチンのメチル化異常を調べることを目標とした。進捗状況は、まず研究用ヒトドナー角膜の角膜上皮、実質、内皮の各層より細胞を採取し、培養した。また、選択的に未分化な細胞を採取するために、スフェアー法という方法により、角膜上皮、実質、内皮の各層から組織幹細胞/前駆細胞を採取することに成功した。採取した細胞を免疫染色ならびにRT-PCRで遺伝子発現を調べると、通常の細胞と比較して、スフェアーを形成する細胞はBrDUの取り込みが高く、また上皮では上皮未分化マーカーであるp63が発現しており、神経堤由来である実質と内皮のスフェアーほ神経未分化マーカーであるNestinが強く発現していた。これらの細胞は次年度以降に、通常の細胞と前駆細胞の間にメチル化パターンに差があるか調べる実験に用いる予定である。次に、角膜のどの部位に幹細胞が存在するのか、あるいはどの部位に老化した細胞が存在するのかを調べるために、ヒトドナー角膜の、中央部分と周辺部分にわけて、それぞれ角膜上皮、実質、内皮細胞を採取した。また年齢によって遺伝子のメチレーションに差があるか調べるために、マウスの生後1週目の角膜と生後10か月目の高齢マウスから、それぞれ角膜上皮と内皮細胞を採取した。本年度採取し、保存した細胞は現在、メチレーションパターン解析用に細胞を保存している。次年度はこれらの保存した細胞を用いて、各サンプル中の細胞のDNA、ヒストン、クロマチンのメチレイションパターンを調べる予定である。
|