研究課題
本研究では、細胞分裂制御のキー分子として機能しているタンパクの多くが、APC/Cユビキチンリガーゼ複合体によりユビキチン分解されることに着目し、APC/Cによる基質タンパクの分解機構の詳細を明らかにし、APC/Cによる基質タンパクの分解異常がもたらす細胞周期制御の破綻とその癌化への関与について詳細に検討する。本年度は、APC/Cの基質タンパクのひとつであるGemininがリン酸化によって、ユビキチン分解制御を受けていることを明らかにした。Gemininのリン酸化部位を種で保存されているThr25、Ser32、Ser60に着目し、それぞれのアミノ酸をアスパラギン酸に変異させ、リン酸化を模倣した変異体を作成し、G1期でのタンパクの安定性を検討したところ、Thr25をアスパラギン酸に変異させた変異体(T25D)のみ分解が抑制された。実際に、T25D変異体は、in vitroでのユビキチン化を抑制した。さらに、Thr25は、Aurora-Aによりリン酸化されるコンセンサス配列(R-X-S/T-L/V)を有していたため、Aurora-Aによりリン酸化されることが推測されたため、in vitroでキナーゼアッセイをしたところ、GemininのThr25はAurora-Aによりリン酸化されることが明らかとなった。以上のように、本年度は、APC/Cの基質タンパクのひとつであるGemininが細胞分裂期において、Aurora-AによりThr25がリン酸化され、リン酸化されることによりユビキチン分解から免れていることが明らかになった。また、Gemininが分裂期でリン酸化されずに分解されてしまうと、DNA複製に必要なPre-RCの形成がおこらず、分裂後のS期でおこるDNA複製がおこらないことも明らかにした。来年度は、さらに、Aurora-AによるGemininの分解制御の詳細や他の基質タンパクの制御やAPC/CインヒビターであるEmi1の制御についても解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
Gemininのユビキチン分解制御について、詳細な検討ができた。他の基質タンパクの制御についても同時に行っていたが、詳細な検討まではできなかった。
本研究課題について、今後は、他の基質タンパクの制御についても詳細に検討するとともに、これら因子の制御異常が癌化に関与するかどうかの検証と実際の癌症例での異常について検討したい。
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Cell
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