研究課題/領域番号 |
23689075
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡本 一男 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (00436643)
|
キーワード | 骨代謝 / 関節リウマチ / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / Th17細胞 |
研究概要 |
関節リウマチや歯周病などの慢性炎症に伴う骨破壊疾患は、『免疫異常による炎症』と『異常な骨破壊』という二つの病的現象に依存している。本研究課題では、炎症性T細胞サブセットであるTh17細胞の分化必須因子IκBζに焦点を当て、「Th17細胞性炎症応答」と「破骨細胞性骨破壊」の両プロセスを包括して制御できる治療法の基盤確立を目指す。本課題を遂行するにあたり、当該年度では以下の2項目について実施した。 1.IκBζコンディショナルノックアウト(CKO)マウスの作製: 当該年度に入り、欧州条件変異マウス作成プログラム(EUCOMM)にてC57BL6 backgroundのIκBζ fioxedES細胞株が樹立されたため、当ES細胞株を購入し、キメラマウス作製準備に着手した。 2.骨代謝細胞におけるIκBζの機能解析: IκBζノックアウト(KO)マウスの骨表現型を、1)μCTと軟X線撮影を用いた脛骨・大腿骨における海綿骨・皮質骨の解析、2)病理組織標本を用いた骨形態計測、3)カルセインダブルラベル法を用いた骨形成率解析、により検討した。その結果IκBζKOマウスでは、破骨細胞数及び骨吸収の増加により、有意に骨量が減少していることが認められた。またIκBζKOマウス由来の初代細胞を用いたin vitro培養系を用いて、破骨細胞及び骨芽細胞におけるIκBζの機能を検討した。M-CSF/RANKL刺激による破骨細胞分化培養系により、IκBζ欠損細胞では破骨細胞分化と骨吸収能の亢進が認められた。一方頭蓋冠由来初代細胞培養系では、IκBζ欠損細胞でも骨芽細胞分化および石灰化能に差は認められなかった。さらに、骨芽細胞と骨髄細胞との共存培養系を用いて、骨芽細胞による破骨細胞支持能にIκBζが関与する可能性について検討した。野生型およびIκBζ欠損破骨細胞、ならびにPTH、VD3、PGE2、IL-1、IL-17、TNFαなどのホルモンやサイトカイン刺激後の野生型およびIκBζ欠損骨芽細胞よりRNAを調整し、破骨細胞分化・形成に関わる遺伝子の発現解析を実施し、IκBζによる骨代謝細胞制御に関わる標的遺伝子の探索を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EUCOMMからのES細胞株の購入手続きや納品に予想以上に時間を費したが、年度末にES細胞株は納品が完了しており、またキメラマウス作製に至る準備も既に進めているため、次年度早々にもマウス作製に着手できる予定である。当ES細胞はC57B6 backgroundであり、また交配予定のCre発現マウスも既に所属施設に導入済みであるため、各種IκBζ CKOマウスの作製が速やかに遂行できる状態にある。IκBζKOマウスにおける骨表現型解析、ならびにin vitro培養系を用いた破骨細胞・骨芽細胞分化実験は概ね計画通り進行しており、興味深い成果が得られつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
IκBζ CKOマウスを用いたコラーゲン誘導性関節炎モデルならびにK/BxN血清移入関節炎モデルを実施し、炎症性骨破壊におけるIκBζの生理的機能を評価し、炎症性骨破壊治療におけるIκBζの分子標的としての有効性を生体レベルで検証する。また、骨代謝細胞及び滑膜線維芽細胞におけるIκBζ標的遺伝子を網羅的発現解析により同定し、さらにChIP法により遺伝子発現制御メカニズムをエピジェネティクスの観点より検証する。そのために網羅的ChIP法に有効なhigh affinityの抗IκBζ抗体が必であり、現在既に新規の抗体作製を実施する計画を進めている。最終的に治療ターゲットとなりうるIκBζ標的遺伝子を探索し、その同定並びに制御法の確立を目指す。
|