研究課題/領域番号 |
23689076
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 竜介 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教 (60380705)
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キーワード | 味細胞 / GABA / 遺伝子改変マウス / 味覚 / 発達 / Cl^-濃度 |
研究概要 |
本研究では、GABAの発達過程での機能に注目し、神経挫滅後の味覚情報ライン再生過程における味蕾内GABA系の機能・動態および作動機序を解析することで、味細胞の機能成熟におけるGABAの役割を明らかにすると共に神経系における分化・発生・再生のモデルと成すことを目的とする。本年度は、味細胞から放出されるGABAを定量するためのシステムの構築を試みた。申請者らの先行研究での味細胞からのATP放出検出に倣い、味細胞から味刺激により放出されるGABAを基質(α-ketoglutarate)および酵素(GABase)を用いたNADP+→NADPH変換による蛍光検出法を用い測定したが、検出感度不足のため定量できるまでに至らなかった。このため、味細胞から放出されるGABAの測定には、GABAイメージングを利用する予定である。予備実験の段階であるが、脱分極刺激により味蕾から放出されるGABAの検出には成功している。また、塩味応答細胞を同定するためENaC-GFPマウスを作成する予定であったが、Oxcitocin Receptor-YFPマウスを利用することで塩味細胞を同定できる可能性が示唆され、現在、YFP発現細胞の応答を解析している。 さらにシングルセルRT-PCRや免疫染色法を用い、GABA受容体、および細胞内Cl^-濃度に関与するCl^-トランスポーター(NKCC1とKCC2)の発現解析を行った。本研究のターゲットとなる茸状乳頭領域において、GABA_A受容体サブユニットα1、α2、α5、β2、β3、γ3、δ、π及びGABAB受容体サブユニットR1、R2が検出され、NKCC1やKCC2の発現も認められた。このうちKCC2に関しては多くのIII型細胞で発現が見られたがII型細胞で発現する細胞は少なかった。このCl^-トランスポーターの発現差は、各味細胞のGABAに対する応答性の差に関連する可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定した味細胞から放出されるGABAを測定するシステムが検出力不足によりこのままでは利用できない可能性が浮上した。今後GABAイメージングに切り替えることで同等の実験が行えるものと考えられる。それ以外の部分についてはおおむね当初の予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
味細胞からのGABA放出を測定するためのシステムを早急に構築すると共に、C1-イメージングによる細胞内Cl^-濃度の測定と、GABA刺激によるその変化について解析を行うことで、味細胞におけるCl-トランスポーター発現差についての機能的な側面を明らかとする。また、Oxcitocin-receptor-YFPマウスを用い、YFP発現細胞の応答特性を明らかとすると共に、GABAの味細胞応答に対する影響について解析をする。
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