研究課題/領域番号 |
23689076
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 竜介 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (60380705)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 味細胞 / GABA / 遺伝子改変マウス / 味覚 / 発達 / Cl-濃度 |
研究概要 |
本研究では、GABAの発達過程での機能に注目し、神経挫滅後の味覚情報ライン再生過程における味蕾内GABA系の機能・動態および作動機序を解析することで、味細胞の機能成熟におけるGABAの役割を明らかにすると共に神経系における分化・発生・再生のモデルと成すことを目的とする。本年度はまず、味細胞の細胞内Cl-濃度測定とGABAによるその変化について調べた。このため、新たに味細胞で細胞内Cl-濃度を測定する方法(Cl-イメージング)を構築した。6-methoxy-N-ethylquinolinium iodide (MEQ)により有郭乳頭味細胞を染色し、GABAを投与したところ、一部の細胞で蛍光強度の増加(細胞内Cl-濃度の低下)が見られた。また、細胞内Cl-濃度の定量を試みたところ、通常の神経細胞などで報告されている濃度(5-10mM)よりも高濃度を示す味細胞が存在した。これらの結果は、味細胞の一部は細胞内Cl-濃度が高く、通常は内向きのCl-電流により細胞興奮が抑制されるところが、逆に外向きのCl-電流を生じることにより脱分極が生じる可能性を示唆する。また、免疫組織化学的に細胞内Cl-濃度調節に関与するNKCC1やKCC2の発現を調べると、有郭及び茸状乳頭のT1R3を発現する味細胞で両トランスポーターが発現していた。T1R3発現味細胞では、細胞内Cl-排出型のKCC2よりも細胞内Cl-取込型のNKCC1の発現割合が大きかった。従って、一部の甘味細胞ではNKCC1を有意に発現し、細胞内Cl-濃度が高く保たれるため、GABAによる脱分極性応答が生じる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経挫滅後の味蕾内GABA系の機能・動態解析において、明確なデータを得られておらず、この点に関し予定より遅れていると考えられる。それ以外の部分についてはおおむね当初の予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
神経挫滅後の味蕾内GABAの機能・動態解析に注力する。また、GAD67-floxマウスを入手しており、これに適当なCreマウスを掛け合わせることで、GABA合成酵素のGAD67の味蕾特異的KOマウスを作ることができ、そのマウスを用い味蕾内GABAの機能解析を進める。場合により、胎生~発生時の味蕾内GABA機能解析を行うことで、発生時における味蕾内のGABA機能の解析を行う。
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