研究概要 |
歯根膜幹細胞に特異的なマーカー分子の同定および機能解析に有用なヒト歯根膜細胞クローンの樹立を目的として、不死化した歯根膜細胞から得られた各細胞クローンのキャラクタライゼーションを行った。 先ず当研究室にて樹立したヒト不死化歯根膜細胞(Fujii et al.,2006)から限外希釈法により22個のクローン細胞株を単離した。各クローンの多分化能を骨芽細胞、脂肪細胞および軟骨細胞の分化誘導アッセイ系により比較検討した結果、全ての分化実験において分化を示した“多分化能を有する歯根膜細胞クローン”と、いずれにおいても分化を示さなかった“分化能が著しく低い歯根膜細胞クローン”の各2クローンずつを抽出した。両クローンは、ヒト歯根膜細胞に特徴的な紡錘形を呈しており、qRT-PCR法にて歯根膜関連マーカーを発現していた。一方で、分化能の低い歯根膜細胞クローンと比較して、多分化能を有する未分化な細胞クローンにおいて、qRT-PCR法にて幹細胞マーカーOct4, NANOG, N-cadherin, Endoglinおよび神経堤細胞マーカーのSLUG, CD49D, p75NTRの発現が、また、フローサイトメトリー分析法においても間葉系幹細胞表面抗原マーカーのCD73,CD90,CD105,CD146,CD166の発現強度が高かった。さらには、各クローンをβ-TCPとともにマウス皮下移植した実験では、多分化能を有する未分化な細胞クローン群において硬組織様組織形成が認められた。 以上のことから、ヒト歯根膜細胞株の中には“多分化能を有する未分化な歯根膜幹細胞クローン”および“分化能が著しく低い歯根膜幹細胞クローン”が存在することが明らかになった。現在、この2つの特徴の異なる歯根膜細胞クローンの遺伝子発現量の差を網羅的に解析し、歯根膜幹細胞集団に特異的なマーカー分子の同定および機能解析を行っている。
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